宿泊業界の成長へ経験・ノウハウ提供
観光振興を聞く5
ボンド 社長 馬水茂男 氏
2008年に広島で初となるホステル&カフェバー「バックパッカーズ宮島」をオープンし、インバウンドの交流の場としてにぎわっている。18年秋には広島市内中心部に女性専用の新業態を開業。培った経験やノウハウを生かし、県内外の宿泊施設のウェブ集客代行に取り組み、業界全体のサービスの底上げを図る。
-利用状況や新業態は。 バックパッカーズ宮島の稼働率は70%以上。外国人宿泊者が7割で、外国人は日本人以上に口コミ・レビューを重視する傾向がある。スタッフや宿のファンになったとリピーターも多く、連泊者が多いことが特徴です。また、スタッフが手作りしたガイドブックが好評で、広島の主要スポットのほか、近隣の身近な観光地も紹介しています。
18年10月には中四国で初の女性専用の個室型ホステル「クレイン広島平和公園」を開業。また、同施設に併設する女性専用有料パウダールーム「コハク」もオープンしました。国内外の女性に人気で利用者も増えています。
ホステルの良さは安価な宿泊料金に加え、スタッフや地域との距離感の近さといったソフト面です。一方、昨今は大手企業の参入で、安価な上、最新設備が充実するなど、ハード面も整った施設の開業が相次いでいます。さらに、ビジネス・シティホテルが価格を下げて集客を図るなど宿泊業界の競争が激化し、両業態の垣根がなくなりつつあります。20年の東京五輪以降は、観光客の地方分散化が進み、広島へのインバウンドはさらに増加すると予測しています。同じ価格帯でビジネス・シティホテルと競争するには、独自の企画やサービスなどの差別化が重要。各ホステルが特徴や魅力を発信し、競争原理が働くことで、ホステル業界全体が成長するチャンスだと捉えています。
-今後の取り組みは。当社では長年の経験を生かし、19年からウェブ集客代行サービスを始めました。宿泊事業者向けに予約サイトの運用方法やサポート・インバウンドの集客アドバイスをしています。施設運営だけにとどまらず、顧客データ分析による、効果的なマーケティングを活用し、売り上げが伸びると新たな事業や雇用にもつながります。売り上げ低迷・集客難に悩む事業者が増えているので、力になりたいですね。また、広島のインバウンド関連事業を拡大し成長させたい。特にナイトライフツーリズムの仕組みづくりは急務で、インバウンドは昼間の観光だけでなく、夜の観光にも高い関心を持っています。同市場における伸びしろの一つとして注目を集めており、今後ますます拡充されるでしょう。海外はもちろん、首都圏や関西圏などでは、夜景スポットや夜の乗り物、クラブやバーなどでインバウンド向けの企画をしており、広島でも同様の取り組みができると考えています。業界の底上げにつなげるために官民一体で考えたい。
【プロフィール】
鹿児島県出身。世界中をバックパッカーとして旅をした後、2008年にホステル運営のボンドを設立。廿日市市宮島口と広島市中区で宿泊施設を運営するほか、ウェブ制作とビルメンテナンスの会社を経営する。