《サッカースタジアム建設始動》プロジェクトのキーマン3者に聞く②
広島経済レポート
24年2月開業、回遊性高めにぎわい創出
サンフレッチェ広島の新たな本拠地となるサッカースタジアムが2月1日、中区の中央公園広場で着工した。市はスタジアムの設計・施工事業者に大成建設など8社(フジタ、広成建設、東畑建築事務所、環境デザイン研究所、復建調査設計、あい設計、シーケィ・テック)で構成するJV(共同企業体)を選定。市、サンフレッチェ広島、大成建設の3者にコンセプトやプロジェクトにかける思いを聞いた。
回遊型でにぎわい創出 年310万人の集客目指す
-今の感想を教えてください。公園広場に7階建て延べ6万平方㍍に及ぶ巨大施設を新築する一大プロジェクトを無事にスタートでき、ほっとしています。24年2月の開業まで工期の余裕はなく、関係各社と連携をいっそう強めていきます。建物を支える計383本のくい工事を予定通り3月末に終え、4月中旬時点で1階の基礎工事に移りました。今秋にはスタジアムの躯体部分ができ上がって規模感が分かるようになります。23年明けに屋根、5~6月ごろに観客席の工事にとりかかり、12月に竣工予定です。楽しみにしておいてください。
-にぎわいを生むさまざまな仕掛けがあります。新国立競技場を設計・施工した大成建設や、マツダスタジアムを設計した環境デザイン研究所がJVに加わっています。共に日本を代表する競技場で、さまざまなノウハウを盛り込みます。
スタジアム北側のメインビジョンには新国立競技場と同じ横32×縦9㍍の大型スクリーンを採用。4階観客席前には全長360㍍のリボンビジョン(帯状映像装置)を備え、迫力のある映像演出を楽しめます。2階部分のパークコンコースは広場~スタジアム~本川の湖畔をつなぐ公園全体の主動線で、グッズショップやレストランなどが入る多機能化施設をはじめ、フィールドが見渡せるエリアなどを配置します。あらゆるイベントを想定し、キッチンカーの乗り入れも可能です。ここが新たな目的地となり、さらなるにぎわい創出に期待します。
回遊型の野球場として国内で先駆けて整備したマツダスタジアムは、同じ市内に立地していることもあり、参考にすべき点が多いと思います。
私は09年から3年間、マツダスタジアムの設備改善を担当しました。特に思い出深いのは、レフトスタンド側2階部分のプレミアムテラスの改修。従来の硬い素材の座席から、柔らかいクッションシートに変え、足元をガラス張りにしてより観戦しやすい環境にしました。なかなかチケット購入ができない人気席となり、誇らしい。サッカースタジアムでもバラエティー豊かな席で多くの人に喜んでほしいですね。
南側の紙屋町・八丁堀や旧市民球場跡地から結ぶ主要動線のペデストリアンデッキ(歩行者専用橋)を整備します。多くの人が行き来することを想定し、マツダスタジアムのプロムナード(遊歩道)と同じ幅員の10㍍を確保。東側の広島城をつなぐ幅員8㍍の同デッキも設けて周辺施設との回遊性を生み出し、街中にあるメリットを最大化します。
-経済効果にも期待がかかります。スタジアムや隣接する広場エリアの集客目標は年間310万人で、市が試算した県内での経済波及効果は約6760億円です。建設に関わる投資と開業から20年間の飲食や宿泊、交通、買い物の費用など幅広い効果を合計した金額です。
広島市 都市整備局スタジアム建設部長
吉谷 勝美 氏
1965年6月26日生まれ、広島市出身。市立基町高校、広島工業大学を卒業し、89年に入庁。建築技師として都市計画や住宅政策業務に従事。2009年から3年間、マツダスタジアム(南区)の施設改善などを担当。21年4月から現職。
「広島経済レポート」2022年4月28日号掲載記事