従業員と共に成長できる企業を目指し
配送ルートや会議の見直しなどで業務の効率化に成功

株式会社広島県リースタオル

取り組んだ背景
 ~長時間労働を見直し、働きがいのある職場を目指す

 1967年創業で、飲食店向けのおしぼりや、病院・介護施設向けの清拭(せいしき)タオルなどを貸し出す。社長の田畑裕生氏は、
「市内外をルート配送する営業担当者の朝の出勤時間が午前6~7時と早いことから、長時間労働になりやすく、さらに担当制のため休みを取りづらい状況でした。これらの状況を改善し、働く環境を良くすることで、長期的には生産性の向上や業績アップにつながると思いました」と話す。
働き方改革関連法の施行を機に2019年、担当者が広島県主催の「働き方改革社内推進人材養成セミナー」に参加した。そこでの学びを実践するため、全従業員へのウェブアンケートを実施。最優先課題に挙がった営業部署の長時間労働などを改善し、仕事とプライベートの充実を図り、働きがいを感じながら従業員と共に成長できる企業を目指す必要性を感じたという。同年11月に、田畑氏が働き方改革の取組を始めることを従業員に宣言し、田畑氏と営業推進部・生産管理部の担当者を中心に取組を本格化した。

主な取組と工夫点

◆配送ルートを見直し、退社を1時間早める
 配送業務を担当する従業員は約10人。これまで配送ルートの選択は現場担当者に任せきりで、見直すことはなかった。そこで、取組を機に全員の担当先をリストアップし、ルートを整理。1つのビルに2人の営業が回るなど非効率な点が明らかになったため、担当先やルートを再編成することにした。特に東広島・西条エリアのルート担当者は退社時間が遅くなりがちであったが、ルート再編成の3か月後には同エリア担当者の退社時刻を平均で1時間早めることに成功した。

◆納品・集金方法を変えて配送・事務を効率化
 以前は、おしぼりの納品・回収時に取引先担当者が不在だった場合、改めて訪問していた。また、飲食店オーナーなどは夕方以降に出勤することも多いため、残業につながりやすかったという。そこで、不在時にもおしぼりの納品・回収ができるように店の鍵を預かる方法や、店のドア付近への外置き納品・回収を推進した。集金業務でも取引先担当者が不在の際は再訪問に時間をとられていた。また、手書きの領収書作成件数も多く、社内での事務処理にも時間がかかっていたという。集金業務に関わる時間のムダを省きたいと、取引先に会社の方針を丁寧に伝えて協力を呼びかけ、約300件の取引先のうち半数をコンビニ支払いなどに移行。社内の事務処理もデジタル化した。

◆会議の運営方法の見直しやチャットシステム導入で業務を効率化
 これまでの社内会議では、議題が不明確で意見交換が進まず2時間以上かかることが多々あった。そこで、会議は30分以内に終わるようルール化。「議題の提示」、「意見の提出」などタスクごとに開始・完了日を帯状グラフに表した会議運営のための「ガントチャート」を作成した。約2カ月間のガントチャートを張り出し、議題は1週間前に提出するなどスケジュールを定め、それを基に、営業推進部係長の今田浩之氏が役職者への呼びかけや、進捗・締切の確認などを行っている。これらの取組により短時間で効率的な会議運営につながっている。 業務の効率化に向け、社内チャットシステムも導入。「長文はNG」、「返信不要」などのルールをつくり、チームごとに運用した。例えば営業チームの場合、配送中に新店を見つけたら、新規営業先候補としてその場で写真を撮り画像で共有するなど、情報共有の簡易化・スピード化を図っている。

取組の中で苦労したこと
 ~上司同行で納品・集金方法の変更を周知、社内にも地道に呼びかけ

 取組の中で特に社外に対する納品方法や集金業務の変更に労力がかかったという。会社で働き方改革に取り組んでいることを伝え、大半の取引先の理解は得られたものの、なかなか理解を得られない取引先もあった。そこで、上司も同行して会社の方針などを丁寧に説明することで、少しずつ協力先を増やしていった。また、会議の仕組みを変更するにあたり、社内への浸透にも苦労したという。今田氏は、
「営業メンバーは直行で外回りに出ており、朝礼などでの情報共有の場がないため、私が個別に声がけやフォローを行いました。社内での仕組みを変えようとする時には、特に社歴が長い人ほど慣れるまで時間がかかるので、こまめに呼びかけることが大切だと感じました」と話す。

取組の成果 ~成果が見えると、社内の雰囲気も前向きに

 配送ルートの見直し、納品や集金方法の変更、会議の短時間化などを通して、退社時間が早まった。これまでは残業が常態化し、午後7時前後に退社する人が多かったが、取組後は午後5~6時台には大半が業務を終えるようになった。中でもルート配送する営業担当者の平均退社時間は18年の午後8時から19年には午後7時、20年には午後6時と年々改善されている。取組の成果が出たことで従業員の意識が変わり、早く帰ることに対する罪悪感や違和感も自然となくなっていったという。当初、今田氏など推進担当者が主導して取組を行ってきたが、今では現場での社員同士の声がけが活発になっているという。今田氏は、
「具体的な成果が見えたことで、例えばゴミを拾う、日頃から掃除して社内をきれいに保つなど些細なことであっても従業員から改善に向けた声が挙がるようになりました」と話す。

課題や今後の目標 ~プライベートも大切にする、より働きがいのある会社に

 田畑氏は、
「当社はおしぼりの納品・回収などのほかにさまざまな消耗品も扱い、当日注文にも対応する使い勝手の良さが強みですが、それが従業員の立場では残業などの原因にもなりうる。利便性という顧客からの信頼と、従業員の働きがいの双方のバランスを考えながら、改革を進めなければならない」と話す。
限られた人員で業務をこなしながら、休暇を取得しやすくするために、今後は多能工化を進めていく予定だ。現在、営業担当者は3年以上同じルートを担当し、長い人は5年以上になる。これを2年ごとに変更し、一人一人が多くの取引先を知っておくことで、欠員や急な休みにも対応できる環境を整えたいという。また、一方通行などの道路情報にも共有すべき情報が多いため、これまで引き継ぎに1カ月半ほどを要していたが、引き継ぎ方法自体も見直していく予定だ。 田畑氏は、
「当社は『従業員を大切にし、共に成長し続ける』という経営理念を掲げています。今後も取組を続け、従業員が家庭やプライベートの時間も大事にしながら、やりがいをもって仕事ができる会社を目指します。それが結果的に健康経営優良法人などへの認定や業績アップにつながると考えています。従業員が長く働いて良かったと思えるような、そして、いずれは従業員から次期の社長を輩出できるような会社にしていきたい」と展望を話す。

従業員からの評価

生産管理部 課長
竹本 泰洋 氏

 取組を始めて、仕事とプライベートのメリハリがつくようになり、生産性の向上にもつながっていると感じています。休みも取りやすくなりました。私は役職者と現場の間の立場です。取り組む上での私が果たすべき役割は、コミュニケーションやフィードバックだと考えています。現場主体で取組を行うので、その内容や成果などを役職者に説明し、意見や考えなどを現場にフィードバックして彼らのモチベーションを上げることが大切です。そのために、引き続き働き方改革の呼びかけを積極的に行い、周知を徹底しなければと使命感を感じています。

取材日 2020年9月

会社概要

株式会社広島県リースタオル
所在地:広島市南区東雲1-12-27
URL:http://www.kenlease.co.jp
事業内容:おしぼり・タオルのレンタルなど
従業員数:76人(男性23人、女性53人)
(2020年9月時点)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com