働き方改革を顧客にフィードバックし営業提案力向上
短時間勤務の導入やリモートワークで柔軟な働き方を
株式会社弘法
取り組んだ背景 ~残業文化を見直し、自主性を生かせる組織へ
企業や自治体向けに複合機などのOA機器の導入・保守を手掛け、近年は業務の効率化や社内コミュニケーションの増進などを目的に、事務所のレイアウト改善などの提案にも取り組む。以前から就労環境の向上や、意欲・能力を発揮できる職場づくりを進めてきたが、〝残業文化〟が課題の一つだった。代表取締役の弘法敦志氏は、
「営業社員は午後5時まで外回りをし、それから会社に戻って日報を記入しており、時間外労働が日常的に行われていました。また毎年3~4月の年度末・年度始めは自治体や学校向けの仕事が急増し、繁閑の差の大きさもネックになっていました」とこれまでの課題を話す。
またトップダウン型の組織に閉塞感を感じることもあったという。
「以前は先代社長の圧倒的なリーダーシップの下で成長を実現してきましたが、社会環境、経済環境が日々変化する中、従業員の持つ専門性や知識を集め、時代に合った提案活動が不可欠となっており、従業員の自主性を育む必要があると感じていました」と弘法氏。
そこで、「広島県働き方改革実践企業」の認定に向け、取組方針を社内に発信。企業成長の根幹である「収益改善や事業継続の実現」とさらなる「従業員満足度の向上」の2つを両輪で進めることにした。
主な取組と工夫点
◆働き方改革を営業提案力の向上につなげる
収益改善・事業継続の実現に向けて、さまざまな取組で業務効率の向上を実現するほか、働き方改革に絡むICT関連商材をはじめ、ペーパーレス化、フリーアドレス化などオフィス改善の提案力を高めることを掲げた。取締役の大上慎介氏は
「お客さまに改善提案を行う立場なのに、自社では何もしていないようでは提案に説得力が生まれない。以前から社内の環境改善の必要性が高まっていたこともあり、まず自社で働き方改革を実施することで、自らの経験を基にクライアントへの提案力を高めることを目指しました。」と話す。
そこで、社内のオフィスを改装し、ペーパーレス化やフリーアドレス化も図った。弘法氏は、
「当社は印刷機械を扱っているため、ペーパーレス化への抵抗感は少なからずありましたが、営業やサービス(保守)に携わる全従業員に民間資格のペーパーレス検定を受けさせるなど、少しずつ機運を高めていきました」と成果を話す。また、社長室を設けず従業員と積極的にコミュニケーションを図ることで、従業員からも自然と意見や提案が上がってくる風土ができているという。
◆リモートワークなど時間・場所を選ばない働き方を実現
まず業務効率化や残業削減に向け、場所や時間にとらわれずに働けるようにリモートワーク環境の整備に取り組んだ。他社に先駆けて営業社員らにはモバイルパソコンやスマートフォン、タブレット端末などを支給していたが、うまく運用できていない面があったという。新たに顧客・営業管理のグループウエアを導入し、社外から顧客情報にアクセスでき、日報も会社に戻らなくても入力できるようにした。
広島、山口県にある計9拠点の「サテライトオフィス化」も推進。自身が所属する拠点に限らず、都合の良い場所で勤務できる体制を整えた。それぞれの勤務状況を見える化するために、勤怠管理の専用アプリを導入し、各営業所に50インチの大型モニターを設置。テレビカメラで事務所の映像を常に映し、誰がどの事務所で働いているのかを視覚的に把握できるようにした。
また新型コロナウイルスの感染拡大で緊急導入した在宅勤務は、間接部門で育児目的での制度利用者を対象に継続して実施している。在宅勤務の従業員とも大型モニターを通して、いつでも気軽にコミュニケーションをとれる体制にしている。
◆短時間勤務など、より柔軟な働き方を実現
仕事と家庭の両立支援へ、子育て中の従業員向けに短時間勤務制度を新設。小学3年生までの子供をもつ従業員を対象とし、通常の勤務時間7時間30分から、希望に応じて6時間30分、6時間、5時間30分のいずれかに短縮できるようにした。まだ対象者はいないが将来を見越して、家族の介護が必要な従業員向けの介護短時間勤務制度も設けた。そのほか半日単位の有給休暇の取得制度や、ノー残業デーの新設など制度を充実させている。
◆従業員の健康面もサポート
もともと禁煙手当てという制度でたばこを吸わない従業員に毎月3000円を支給するなど、従業員の健康面での支援を行ってきた。この制度は、喫煙する従業員を対象に禁煙外来費用を補助する「禁煙チャレンジ制度」に改めた。また数年前から、プライベート時のけがや疾病の治療費を負担する医療保険の福利厚生制度も導入。20年3月には「健康経営優良法人」の認定を受けた。弘法氏は、
「従業員は大切な経営資源ととらえています。充分に力を発揮してもらうためには健康であることが重要です。今年はインフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行が懸念されており、家族を含めてインフルエンザの予防接種費用を補助する計画です。こうした従業員への健康サポートや働き方改革の取組が、従業員のモチベーション向上につながっているように思います」と話す。
取組の中で苦労したこと ~ICTツール運用の理解度に差も
アプリケーションなどさまざまなICTツールを導入する中で、従業員の順応に差が出るなど、定めたルールを周知・徹底させるのに苦労もあったという。継続して趣旨などを伝えたほか、社内のITソリューション担当者が従業員の声を聴いて回り丁寧にフォローを行うなど、着実に定着を図っていったという。
取組の成果 ~限られた時間で効率的に働く意識を醸成
働き方に関するさまざまな改善活動の取組を振り返り、大上氏は、
「限られた時間の中で成果を出していかなければならないという意識が以前よりも高まったように感じています。サテライトオフィス化を実現したことで、自ら考え効率的に働こうとする機運も高まっています」と成果を話す。本社で定期的に行っていた各種会議をオンライン化したことで、交通費が20%ほど削減する効果もあったという。
課題や今後の目標 ~生き生きと働き輝ける組織づくりを継続
今後、在宅勤務を制度として整備して運用体制を整えるほか、まだオフィスで紙を使う場面が残っており、ペーパーレス化を徹底して進めていく予定だ。また、定期的に取組を振り返り、結果やプロセスを対象とする評価制度を通じて、従業員の自主性を高めていく方針という。弘法氏は、
「制度を整えたとしても、従業員の働きがいやモチベーションが高まらないと、生産性は高まらない。従業員自身がこの会社でどれだけ成長しているかを意識してもらいたい。従業員の成長なしに、会社の成長も実現しえない。また従業員には家族がいる。皆にとっていい会社でありたい。今後一層、従業員が生き生きと働き輝ける組織づくりを継続して進めます」と抱負を語る。
従業員からの評価
販売推進チーム ITソリューション部門
笠井 春樹 さん
7年前に入社したときにタブレット端末を支給されたことには驚きました。グループウエアの活用を含め、最先端の会社だなと感じました。リモートワークの推進やサテライトオフィス化で、移動時間の無駄を省くことができ、さらにオンライン商談の推奨などで、これまでは1日2件しかこなせなかった商談を倍の4件まで増やすことも可能になりました。現在はクライアントにIT導入などを支援する業務を担っており、自分たちの経験からお客さまに合った提案ができていると思います。また自分の裁量でコントロールできる時間が増え、以前よりもプライベートで家族との時間を大切にできるようになりました。
取材日 2020年9月
会社概要
株式会社弘法
所在地:広島市中区千田町1-3-4
URL:http://www.kobo-net.co.jp/
業務内容:OA事務機器、プリンターなどの販売・保守、事務用品通販、事務所レイアウト・内装工事
従業員数:60人(男性46人、女性14人)
(2020年8月時点)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)