グローバル化が進む自動車業界こそ
女性のパワーを大切に

ベンダ工業株式会社

1.グローバルな事業展開における語学堪能な人材として、
当社初、2人の女性を営業職へ配置!

 ベンダ工業は、昭和61年、韓国に子会社を設立したことを皮切りに、中国やタイに進出し、早くからグローバルに展開してきた。タイの現地法人であるベンダタイランドに総務・経理・購買統括として勤務している松浦さんは、タイ語が堪能な女性マネージャー。平成25年の設立当時の準備段階から現地従業員の採用などを担当し、なくてはならない存在感を示してきた。明るく、親しみやすい人柄で、自分の意見をはっきりと主張する。その仕事への真面目な取組について、現地従業員からの信頼も厚い。

Sales and Purchasing Departmentマネージャー 松浦 和美さん

 ベンダ工業で活躍している女性は松浦さんだけではない。現在、グローバル営業統括の女性役員である進さんが、平成28年に中国の子会社から帰任したのをきっかけに、本社の海外営業職に女性2名を配置・育成中である。2人を海外営業職に配置した理由は、進さんが中国の子会社のトップに就任していた時、日本の購買、出荷部門にいた彼女たちとやり取りするなかで、英語力、積極性、業務スキルがあると感じたため、やる気があればチャンスを与えたいと考えたからだ。加えて、彼女たちの留学経験や、海外勤務への高い意欲、「将来は、どこの国へ赴任してもよい」と希望している点も頼もしく感じたと言う。

 当社初となる「営業職への女性配置」は、グローバルで活躍し、女性役員である進さんというモデルケースがあったからこそ実現した側面が大きいようだ。
「中国に在任中、フランスの企業のお客様8名と、あるプロジェクトについて打ち合わせをしました。男性は、プロジェクトリーダー1名のみで、残りの7名は技術者含めて女性でした。北米も女性技術者が多く、中国の鉄鋼メーカーの技術部長も女性。日本は遅れていると感じました。」と進さんは言う。

 従来から、出荷・検査・梱包業務では多くの女性が活躍しているなか、最近では、管理部門にも積極的に女性が配属されていることから、女性の活躍の場が増え、主任を務める女性従業員も出始めている。GMグループ、現代・起亜グループ、エクセディグループ、日産グループ、フィアット・クライスラー、マツダグループが売上高の上位を占めるなど、グローバルに展開しているベンダ工業グループにとって、女性の働く環境整備も取り組むべき課題の1つといえるのだろう。

2.トップ主導で「働き方改革による生産性向上」を目指す

 ベンダ工業では、土曜日が勤務日であることから以前は土曜日に会議を設定することも多かった。そのせいか何となく休暇が取りづらく、プライベートの予定について話しにくい雰囲気が社内にあったという。

 しかし、近年「健康経営・働き方改革」の重要性を八代社長自身が感じ始めたことから、組織にも少しずつ変化が現れた。土曜日の会議がなくなり、昨年度、八代社長自らが子どもの学校行事に参加したいという思いをきっかけに従業員ができるだけ柔軟に休暇制度を利用できるよう「半日有給」制度を導入。取材当日も、八代社長は子どもの発表会に出席するため、半日休暇を取得中であった。

 また、「記念日有給取得制度」を導入し、年に2日以上は誕生日、結婚記念日、家族の行事等、個人の自由な理由で有給を取得することをルールとしている。

 さらに、部署ごとにノー残業デーを導入し、社外の働き方改革に関する研修に管理職が参加している。新中期経営計画においても「健康経営・働き方改革による生産性向上」が掲げられ、トップ主導で取組を進めている。

3.人事評価・人事制度を見える化。実力主義で昇進できる仕組みヘ

 昨年度、人事評価制度を見直し、評価基準を等級と号数に分けて定義し、見える化した。また、各人の目標をKPI(重要業績評価指標)に落とし込んで設定し、所属長と面談を行う制度も導入。成果の見える化と評価の透明性を図るための仕組みを整えた。

 当社の職種には一般職と総合職があり、前述の営業職の女性2名を含め多くの女性が一般職となっている。総合職には転勤や出張・夜勤が含まれているものの、実質的には転勤や夜勤が想定されない部署や職種がある。反対に一般職であっても出張を伴う業務があるなど、実情と制度がマッチしていない部分があることから、現在、制度の見直しを検討中である。

 また、仕事内容と成果に見合った評価や賃金、職種についても見直しを進め、実力次第で男女区別なく昇進、管理職へ登用する仕組みづくりに取り組んでいる。

●取材担当者からの一言

 広島県の主要産業である自動車業界は、男性中心の組織が多く、女性の役員や管理職が活躍している企業は少ない。競争相手であるヨーロッパ、北米等では女性が活躍しているのに、なぜ日本では、女性管理職が少ないのか。

 取材をするなかで、日本企業が人材の多様化を進めるためには、女性活躍についての成功体験を積んでいく必要があると感じた。

 その点、ベンダ工業では、女性役員が活躍し、女性役員が女性従業員に多様な経験を積む機会を与え、育成するといったいいサイクルができつつあり、今後の女性従業員の活躍に大いに期待できる。

 電気自動車で使用する部品点数は、ガソリン車に比べて1/10になるといわれており、部品会社にとって生き残りが難しくなる時代はすぐそこまで来ている。産業構造の変化を乗り越えるためには、優秀な人材の確保、人材の多様化は不可欠だ。その第一歩として、ベンダ工業の取組は大いに参考にできるものと思われる。

●取材日 2017年8月
●取材ご対応者
取締役 グローバル営業統括兼業務部長 進 宏子 氏
経理部・総務部 部長 岡光 寛 氏

会社概要

ベンダ工業株式会社
所在地:呉市川尻町小仁方1-16-20
URL:http://www.benda.co.jp/
業務内容:自動車等の部品として利用されるリングギアで世界一のシェアを占める製造会社。「ベンダ工法」という角鋼材を冷間曲げ加工して溶接する工法は、「金属リングの製作方法およびその装置」として世界9カ国で特許を取得している。世界の自動車メーカーを中心に、トラック・建機・農機用のリングギアを含め、リング製品全体で年間2,000万個以上を生産するオンリーワン企業である。
従業員数:142名
女性従業員比率:14.8%
女性管理職比率:5.9%
(2017年7月末現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com