労使一体でワークライフバランスを推進し、
コミュニケーションの活性化で社内風土を変革
中電技術コンサルタント株式会社
取り組んだ背景は?
~経営理念を基軸に、活き活きと働ける環境づくり
「建設コンサルタント業は労働集約型産業であり、労働時間が長い傾向があります。その中で、“会社と社員の健全な成長”という経営理念を基軸に、労働時間縮減のみを目的とするのではなく、従業員が元気に活き活きと、ポジティブな姿勢で働ける環境を整えていこうと取り組んでいます」と、代表取締役社長の末國光彦氏。
「業態全体の働き方の課題は、自社だけではなかなか解決できない部分がありますが、お客様である官公庁のご協力のおかげでいい方向に向かっていると思います。最近は特に取組のアクセルが踏まれ、加速する傾向にあると感じています」
取組導入のプロセス
~労使が一体となってワークライフバランスへの対応を検討
20年以上前から、協議会を開催し、仕事と育児や介護との両立を支援する制度等を導入し、会社と労働組合の間で改善を加えながら、従業員の子どもや家族を会社に招いたイベントを開催し職場を理解してもらうなど、働きやすい環境づくりを進めてきた同社。
昨今の国を挙げた働き方改革の流れを踏まえ、時間外管理基準等の見直しや時間外労働の状況に関する執行役員会への報告内容の変更、働き方改革の取組状況の人事考課への反映、月の時間外労働時間の上限値の引き下げなど、従業員のワークライフバランスへの対応策を検討し、具体的な取組を進めている。
主な取組と工夫点
~社内プロジェクトチームによるボトムアップの職場改善
◆社内プロジェクトチームによる職場の改善活動
社内6つの部署ごとに選ばれた5〜6名がプロジェクトチームを組み、それぞれに自部署の課題を絞り込み、改善策を検討し、部署全体を巻き込んで実践している。その取組状況については、中間報告会と最終報告会を行い、効果があった事例については全社へ水平展開することとしている。
「私たちの部では、ホワイトボードを活用したプロジェクトを行っています。部内に置かれたホワイトボードに、メンバーが今抱えている業務のスケジュール、これからしないといけないこと、発注者やお客さまからのメモなどを随時書き込んでいます。これを見るだけで、メンバーの負荷の状態が把握でき、業務の分担を変更したり、調整したりすることができます」と、河川砂防部砂防Ⅱグループ主査の杉原さん。
「原点に戻って見える化することで、アクションを起こせます。こうしたボトムアップの活動によって、業務の改善がより一層進んでいくと考えています」と、末國氏も期待を寄せる。
◆年5日の計画有給休暇制度の導入で取得率向上を図る
2017年より、繁忙期を過ぎた4月から9月の間に有給休暇を計画的に5日取得するという取組を行っている。上司と相談して、スケジュールを管理しているシステムの中に有給休暇を登録し、確実に取得できるように業務を調整する。各従業員の有給休暇の予定は全員が閲覧可能で、社内の依頼は時期をずらし、休暇中は電話しないなど配慮する。その他、連続5日間のリフレッシュ休暇も用意し、積極的に取得するよう呼び掛けている。こうした取組により、有給休暇の平均取得率は向上し、57.3%となっている。
◆フレックスタイム制度で効率的でフレキシブルな働き方を推進
雇用期間の定めのない従業員全員に、フレックスタイム制度を適用している。コアタイムは10時から16時で、各従業員が業務の状況やそれぞれのライフスタイルに合わせてフレキシブルに働く。時間配分を自分で調整しながら働くことができ、退社が遅くなった場合も、翌日の出社までに十分なインターバルを確保できる。
「私は、朝はゆっくりしたいので9時30分ぐらいに出社します。反対に、野球のシーズンが始まると、朝早く来て16時に帰り、球場へ席を取りに行くこともあります」と杉原さん。
◆「技術士」の資格取得や自己啓発をサポート
「当社の業務において重要な『技術士』の資格取得については、受験に向けての説明会や模擬試験などを社内で開催しています」と総務部長の丸田氏。
論文形式の試験のため、各部署で上司たちも、論文を添削したり書き方のコツを伝授したりと協力する。
「その中でコミュニケーションが育まれるという副次効果もあります」と杉原さん。
合格すれば祝い金が出て、合格祝賀会も行われる。その他、会社が指定した資格では、外部の学校等で学ぶための費用や通信教育の費用などを会社が補助している。博士号の取得のために大学へ通ったり、海外へ勉強に行ったりと、従業員が積極的に自己啓発を行っており、会社もそれをサポートしている。
◆ベテランの技術やノウハウを生かして働き続けることができる環境づくり
19年度から新たに、65歳以降もそれまでと同様に働き続けることができる環境を整備する。会社と従業員双方の希望が合えば、1年更新の社員として契約を行う。以前は65歳以降の場合、非正規社員の扱いとなり、社内のセキュリティー上、見ることができないデータがあるなど働く上での制約があった。
「65歳以降も働き続けてもらえる人には、それなりの地位と環境を整え、これまで培った技術やノウハウを生かして活躍してもらいたいのです」と、末國氏は語る。
取組の中での苦労話
「18年度は災害の関係で、突発的な残業が増加してしまいました。その経験を通して、平時と有事のマネジメントの仕組みを整えておく必要性と、有事にこそ協力し合うことが大切だということを実感しました」と末國氏。
「働き方改革については、今までと変わることは困ると言う従業員がいるなど、全員が前向きとは限りません。変わっていくのが当たり前という風土をつくるのが難しいです」と杉原さん。
「職場が一体となってプラスの風土に変えていくことが、これから求められると思います」と、丸田氏も語る。
取組の成果
◆労働時間・休暇(直近1年間)
・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が184.5時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が57.3%、平均取得日数は10.7日
◆多様な働き方(直近3年間)
・育児・介護を除く、フレックスタイム制度の利用が390人
従業員からの評価
「計画有給休暇制度ができてから、上司が休まないから休めないという雰囲気がなくなり、従業員みんなが有給休暇を取るのが当たり前になってきました。休暇を踏まえて業務の工程を立て、みんなで相談しながら調整しますので、コミュニケーションも増えました。メンバーからもかなり好評です」と杉原さん。
今後の目標など
「お客さまから選んでいただける会社になるには、働き方が改善されて、従業員が良い状態でいることが不可欠です。そのためには、労働時間などの法令順守はもちろんですが、それ以上に、社内の風土をいかに変えていくかということを大切にしていきたいです。それには、コミュニケーションの活性化が鍵になります。そういう環境を早く創出して、仕事を通じて地域社会に貢献するとともに、従業員一人一人の成長と夢や目標を実現できる会社を目指します」と、末國氏は締めくくった。
取材日 2019年2月
会社概要
中電技術コンサルタント株式会社
所在地:広島市南区出汐二丁目3-30
URL:https://www.cecnet.co.jp/
事業内容:建設コンサルタント業
従業員数:455名(男性360名、女性95名)
(2018年11月現在)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)