持続可能な自動車社会の実現へ
飽くなき挑戦が続く

自動車研究家 イオ ケンタロウ

 2019年の東京モーターショーでも話題となった自動車の未来技術「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェア、電動化の頭文字)の実用化が進んでいます。 

 コネクテッドは車両への通信器の搭載が進むことで、運転中に役立つ情報取得や緊急時のSOS発信、各種データを共有する道路サービスなど、さまざまな可能性が広がりそうです。自動運転は、日産プロパイロットなどレベルがさらに進化し、責任はドライバーとしながらも分離帯のある高速道路を手放しで走行できるように。シェアは、トヨタのKINTOやボルボのスマボなどのサービスで〝所有から利用〟へと移行する中で、車両費のほか税金保険料や車検・整備も含む定額制プランが登場。一定の成果を上げているようです。 

 急速な電動化の背景に、欧州で21年に始まる企業別平均燃費基準で二酸化炭素の排出基準が厳格化されます。基準に満たないメーカーには罰金が科せられるため、低燃費化は待った無し。EVは平均値を稼ぐ〝飛び道具〟として急速に軸足が移っています。  

 一方、未来を描く次世代技術やサービスが、現実的な視点で精査されています。国は自動運転レベル4(特定の場所でシステムがすべて操作)の20年までの実現を掲げていましたが、実用化には法整備を含めて予定より時間がかかっており、EV化も充電設備の普及など根本的な問題を抱えています。ハイブリッド対EVの主導権争いには、プラグインを含めて共存しながらゆっくりと移行すると思います。また増える高齢者の事故に対し、国は21年から自動(衝突被害軽減)ブレーキを義務化。時代の要請に対応していきます。 

 このように安全性や環境面に注目が集まる中、別のベクトルにSUVブームがあります。低燃費や最新の安全機能がなくても、「カッコイイ」などの理由で人気を集めています。本来、車は個々に自由をもたらし、自己を表現するアイテムでした。このブームは効率性だけで括れない趣味性重視の動き。さまざまな業界に変革をもたらす巨大IT企業のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と、CASEで新たなモビリティーサービスを模索する自動車業界。従来の自動車産業と新興産業が連携して自動車をより魅力的なものに進化させることで、自動車に関する明るいニュースがメディアにあふれることを願っています。