《広島再開発》新広島駅ビル開業
にぎわう「陸の玄関」へ①

□■━━ 広島経済レポート|2025年新春特集 ━━■□

生まれ変わった広島駅ビルが3月24日に開業する。広島電鉄の路面電車乗り入れや、約220テナントの商業施設「ミナモア」などを着工から4年がかりで整備した大型の再開発事業だ。1日14万人が乗り降りする中国地方最大の「陸の玄関口」として人と街をつなぎ、一層のにぎわい創出や利便性の向上に期待がかかる。

2階で広電直結 JRとの乗り換え便利に
提供:JR西日本

新駅ビルの特徴の一つが、広電の路面電車のビル2階乗り入れだ。駅中央口や新幹線口改札と段差なくつながる。乗り換えに伴う移動距離は現在より62㍍、時間は74秒ほど短くなる。今夏をめどに開通予定の新ルート「駅前大橋線」は、八丁堀・紙屋町など市中心部へのアクセス時間を約4分短縮する見込みだ。
広電の乗り入れに伴って生まれた旧乗降場の空間やビル1階を活用し、バスの乗降場を増設した。また、駅ビルには県内初出店(西日本初や中四国初を含む)が3割以上を占めるミナモア、屋上の「ソラモア広場」、380室を備えるホテル、複合映画館なども入り、新たなにぎわい創出が見込まれる。

ミナモア、県内初が多数 3千人の新規雇用見込む
ミナモアのコンセプトは「居心地の良さ」。内装デザインは北欧の街並みなどを参考にした|提供:中国SC開発

ミナモアは地上6階から地下1階までの7フロア計約2万5000平方㍍に及ぶ。
コンセプトは「居心地の良さ」と「広島らしさ」で、全館の内装デザインは北欧の街並みなどを参考にしたという。昨年12月時点で188のテナントが決まり、化粧品のSHIROや機能性衣料品のテンシャル、コーヒーチェーンスターバックスのティー特化店など66店が県内初出店。駅の商業施設「エキエ」の一部店舗もミナモアに組み入れるため、総店舗数は220店ほどになる。3000人規模の新規雇用を見込む。

屋上はソラモア広場 遊具や多目的コート設置
ソラモア広場には人工芝の多目的コートや芝生スペース、テラス、遊具を設置。イベントも定期開催する|提供:中国SC開発

ソラモア広場は駅ビル東側の屋上に当たる9階部分にあり、人工芝の多目的コートや芝生スペース、テラスなどを設ける。子ども向けの遊具を置き、家族連れも楽しめるように工夫する。キッチンカーが営業するほか、イベントやマルシェを定期的に開く計画だ。
ソラモアとつながるビル中央の7、8階部分の大階段からは駅前の通りが一望できる。大階段を下るとウッドデッキを備える隣の屋上広場に行ける。駅北口の「ekie エキキタパーク」は2月16日に営業を終え、同所で開いているサンフレッチェ広島のサッカースクールはソラモアの多目的コートで継続する。

高層階には380室ホテル ドリンクバー付き映画館も
全380室を備えるホテルグランヴィア広島サウスゲート。レストランでは瀬戸内産の魚などの料理を振る舞う|提供:ホテルグランヴィア広島
広島の川をイメージした3階の「雁木(がんぎ)テラス」。路面電車が乗り入れる様子をガラス越しに一望できる|提供:JR西日本

ビル7~21階には、ジェイアール西日本ホテル開発(京都)の旗艦ブランド「ホテルグランヴィア広島サウスゲート」が入る。全380客室を備え、駅北口にある既存のグランヴィア広島を合わせた総客室数は787室になる。
部屋はツインとダブルが中心。訪日客など大人数の宿泊も想定し、2室をつなげられるコネクティングルームもある。一部の客室には県内の高級家具メーカーマルニ木工の「HIROSHIMAチェア」を置く。7階のレストランは瀬戸内産の魚などを使う料理を中心に振る舞い、目の前で調理するライブキッチンも備える。
7階には他に、松竹マルチプレックスシアターズ(東京)の県内初出店となる複合映画館「ムービックス広島駅」が入る。9スクリーン計1387席を予定し、県内の映画館では初めてドリンクバーを導入する。

提供:中国SC開発

回遊性アップへ 近隣4施設と接続
植栽やベンチなどのゆとり空間を設ける

市は路面電車が乗り入れる新駅ビルの2階と近隣4商業施設を結ぶペデストリアンデッキ(歩行者専用橋)を整備して回遊性を高める。
オフィスビルの広島JPビルディング、エディオン蔦屋家電などが入るエキシティ・ヒロシマの両方面は、新駅ビルの開業と合わせ25年3月から供用を始める。福屋が入るエールエールA館方面の通路部分は26年春の供用を、イベントなどができる約650平方㍍のにぎわい広場を含めた完成は28年春を見込む。ビックカメラなどが入るビッグフロント広島方面は同年度末の完成を目指す。エールエールとビッグフロント方面は通路部に加え、植栽やベンチなどを設置するゆとり空間も設ける。
エールエールA館を管理運営する広島駅南口開発は、駅ビルとの接続地点になる同館2階を通って猿猴川の護岸に抜けられる通路やペデストリアンデッキを整備中で、25年度中の完成を予定する。
これまで駅から周辺施設に行くには地下通路や横断歩道を通る必要があった。ペデストリアンデッキを使えば、上下移動や信号待ちなしで移動できるようになる。各交通機関の利用と併せて、近隣施設で買い物や食事を楽しむ人が増えるように回遊性を向上させる。

改装進むエールエールA館
回遊性を高めることで、近隣施設での消費拡大を促す

広島駅南口開発は、26年春のリニューアルオープンに向けて福屋と共にエールエールA館の全面改装を進めている。8~10階には市が同年度当初に市立中央図書館や映像文化ライブラリーなどを開館予定。
先行して昨春までに地下2階の売り場を刷新し、新たに貸し会議室などをオープンさせた。併せて大型書店「ジュンク堂」や広島銀行、クリニックをリニューアル。昨秋には福屋が地下1階の食品売り場を改装。中四国初出店の食品店「タベルト」などが開業した。

駅前大橋線で 駅と中心部の移動早く
南区の松川町交差点近くに新設する「松川町」電停
市と広島電鉄は、路面電車の新路線「駅前大橋線」を夏頃に開業する。狙いは、再開発が進む八丁堀・紙屋町エリアと広島駅間の移動時間の短縮だ。八丁堀方面から稲荷町、的場町、猿猴橋町を通って大きく曲線を描く現行のルートに比べて、稲荷町から駅前大橋を通って直線的に広島駅に向かうことで、広島駅と市中心部間の乗車時間は最大で4分程度の短縮が見込まれる。駅前大橋線は広島駅と比治山町交差点を結ぶ約1・1㌔で、43年ぶりとなる新電停「松川町」も設ける。これまでの猿猴橋町電停を通るルートはなくなる。両エリアをつなぐ市民の足として、一帯の消費拡大を促す役割を担う。

広島経済レポート|2025年新春号掲載記事