Vol.2 株式会社RITA
~社員が安心して長く働ける職場へ 経営理念やシスター制度で社員の道しるべを明確化~
★☆★2023年 広島県における「働きがいのある会社」優秀企業★☆★
広島県は、「働きがい」の民間専門機関であり、世界約100カ国で従業員意識調査を行うグレート・プレイス・トゥー・ワーク(GPTW)の「働きがいのある会社」調査に参加する県内企業に対して、調査費などの補助事業を行っています。本連載では、GPTW2023年版広島県における「働きがいのある会社」優秀企業など5社の取組を紹介します。
企業インタビュー動画
01. 取り組んだ背景
― 安心して長く働ける、業界のイメージ向上へ
広島市中区立町に本社を構え、ヘアやエステなど美容サロンを営む。企業の組織力(マネジメント)、時代に合った仕組みづくり(ストラクチャー)、働きがい(カルチャー)を3本柱に掲げ経営改革に取り組む。平均年収320万円とされる美容業界は30~40代になると結婚、子育てを機に、所得面や労働時間で将来を不安視し、転職する人が多いのが特徴だ。取締役の森脇藍有氏は「当社も以前は離職者が多く、人材不足で生産性も低い状況でした。
好きで始めた美容という仕事にやりがいを持って働き続けてほしい。そこで社員が日々の生活や将来の不安を感じず働ける環境をつくるという強い思いで、所得の向上と福利厚生の改善に重点を置き、取組を行うことを決めました。社員の給料を上げ、福利厚生などで手厚い制度を維持するためには収益を上げる必要がある。そのためには来店客の増加と、社員の生産性向上が連動しなければ収益増につながらないと考え、『新卒採用数の向上、離職率の改善、生産性の向上』の三つを目標に、全社員で取り組む経営改革をスタートしました」と経緯を振り返る。
02. 主な取組と工夫点
制度づくり(ハード)の取組「経営計画手帳」に会社の目指す姿やキャリアパスを明示
取組の柱となる経営理念の浸透については、経営理念を記した手帳を全社員に配付し、毎日の朝礼で15分間1章ずつ読み上げて理念に沿った行動ができているかなど、自身を振り返り意見を交換し合う場を設ける。森脇氏は「困ったり、悩んだ時にこの手帳を開けば会社の指針に立ち返ることができます。会社としての判断基準を作り、これを社員に明示したことで社員が自ら考えて行動するようになりました」。
また、会社の収益増を目指すには「チームで利益を生む仕組み」が必要と話す森脇氏。目に見える実績だけでなく、個々の努力やその過程に対しても評価をし、経営理念や会社との価値観が合っているかも指標に沿って確認できる「キャリアパスの明確化」を行うとともに、新入社員から経営層まで全社員の給料表を開示。「何をしたらどのポジションにつけ、どれくらい給与が上がるか」を見える化し、社員が「努力する」ことへのモチベーションにつなげている。
「シスター制度」の導入で離職率を改善
4年ほど前から、先輩(姉)が後輩(妹)に寄り添う「シスター制度」を導入。個人やチームで目標を設定することで成長を促すとともに、その結果は個人評価にも反映させる。新規採用者以外の全社員がこうした関係をつくり、ローテーションで定期的に交代させ、コミュニケーションの創出を促している。森脇氏は「困りごとの相談先を明確にすることで社員の孤立を防ぎ、教える側に責任感が芽生えるなど自己成長につながっているようです。双方に働く意欲が生まれ、離職率も下がりました。相乗効果として接客サービスの質が高まるなど、良い方向に進んでいます」と手応えを話す。
コミュニケーション強化に食事会費用を負担
社員同士の食事会費用を月に一人当たり4000円まで負担する制度も備える。森脇氏は「円滑な人間関係の構築には職場以外での対話の場は大切だと捉えています。積極的にコミュニケーションを図れるのなら、負担は惜しみません」と話す。時には、食事会で議論してきてほしいテーマを示すこともあるといい、「チームで利益を生む仕組み」の一役を担う。そのほか、子育て中の社員が参加しやすいよう社内行事の懇親会を平日の昼に開催する、休日行事は家族の参加も可能にするなど社員が孤立しない仕組みを多く採用する。
日々のマネジメントを個人・チームで実践
限りある時間を有効に活用するということは業務効率化の観点だけでなく、来店客の満足度向上のためにも重要と話す森脇氏。「大切な時間を無駄にしない、最善のサービスの提供」という価値観を社員で共有し、顧客ごとの「提案プラン」を策定する。また、これに基づいてPDCAを回し、個人が日々の業務を改善する習慣を作っている。一人で解決できないような課題はシスターなどに相談しながらその日のうちに解決し、チームで即座に情報の共有も行う。個人やチームでの改善活動を積み重ねることで、知識も共有でき、価値観に基づいた行動の実践と成長実感の醸成を図っている。
03. 取組の中で感じた難しさや課題
― 結果が出るまでの胆力が会社にも社員にも必要
取組を続けることそのものに難しさが常にあると話す森脇氏。「経営側と社員側の双方が理念に沿った行動をし続けて生産性を高め、業績が上がる、というサイクルが成果に現れるには相当の時間を要しました。時代や状況に合わせて経営方針を変えるため、定着・習慣化していることを『やめる』ということにも相応の胆力がいると感じています。取組を進めるためには、お互いの価値観を認め合うことが必要で、会社と社員の双方向で信頼関係を築けるように一層工夫していきたいです」とさらなる高みを目指す。
04. 今後の課題、目指すべき姿・展望
― 理念承継へ、次世代リーダー育てる
現在は次世代のリーダー育成にも取り組み、社員が経営に挑戦してみたいと思ったときに挑戦できる土俵、体制づくりを進めている。今後はホールディングス化も計画しており、社員には子会社の役員や社長などキャリアを積んでもらう場を作ることで好循環を生み、年齢関係なく働き続けられる会社にしたいと意気込む。
社員の声
入社時はシスター制度を導入する前で、一人で悩みを抱えることが多くありましたが、制度の導入後は、こうした悩みが解消され、安心して働けています。現在は、教える側にもなり、伝える難しさや理解してもらう大変さも感じますが、指針に沿って行動・指導することができるので迷わず進むことができています。
取材日:2023年8月
会社概要
株式会社RITA
所在地:広島市中区立町6-1 立町ウイング3F
URL:https://rita-gp.com/
業務内容:美容サロンの運営
従業員数:59人(男性7人、女性52人)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍 取組サポートサイト「ヒントひろしま」http://hint-hiroshima.com)