組織が個人を信頼し、
個人もそれに応える好循環でより良い組織へ

株式会社スパライフ・コミュニケーションズ

1.誰もが活躍できる組織で非正規から正規従業員に登用され、管理職へ

 株式会社スパライフ・コミュニケーションズ(以下、スパライフ・コミュニケーションズ)は安芸郡坂町の「アジアンリゾートスパシーレ(以下、スパシーレ)」と福山市神辺町の「ぐらんの湯」を運営する企業である。今回の記事ではスパシーレにおける女性活躍に焦点を当てる。 

 女性が活躍する組織の背景には、優秀な従業員は男女問わず役職や裁量を与え、能力を発揮させたいという、大供敬治代表取締役社長の考えと社風がある。

 現在、スパシーレの管理職4名中、3名が女性であるが、2004年のオープン当初から女性客を主なターゲットとしたこともあり、女性非正規従業員を中心として運営してきたそうだ。
「私は当初、出向という形でスパシーレの支配人に就任しました。現場で働く従業員の意見を聞き、改善を実施するため、従業員が活躍できるよう環境を整え、共に改善に励みました」
と大供社長はいう。

 

 その後、スパシーレを運営していた会社から大供社長が経営を引き継ぎ、12年にスパライフ・コミュニケーションズを創立した。これに伴い、非正規従業員3名を正規従業員へと登用。現在、管理職として活躍している角戸由美子取締役、井手正美マネジャー、寺尾容子マネジャーである。

2.主婦の視点を生かした細やかな配慮で居心地の良い温浴施設を創る

 「私のやりがいはお客様の喜ぶ様子を見ること、そして私の役目はスタッフを守ることです」
と話すのは、スパライフ・コミュニケーションズの取締役、そしてスパシーレの支配人として活躍する角戸由美子さんだ。何よりも銭湯が大好きだという角戸さんは、スパシーレのオープニングスタッフ募集を見てすぐに応募したという。 

 広島県内ほとんどの温浴施設に、客として訪問した経験のあった角戸さんは、もてなす側としては未経験であったが、オープニングスタッフとして、スパシーレのオペレーションを確立するために奔走した。他の従業員とのミーティングを重ね、高級温浴施設を目指していたスパシーレのオペレーションマニュアルの作成に尽力した。
「主婦の経験が役に立ちました。いつも家庭で行ってきたことを工夫しつつ、業務にも生かせたんです。掃除などの“なんでもないこと”を丁寧かつ手早く行う大切さは、家事と同じですね」
と話す。例えば、利用者の立場に立ち「取りやすく、見た目もよいドライヤーの置き方」「シャンプーなどのアメニティの置き方」など細かい配慮を重ね、利用者にとって居心地のよい環境づくりに励んできた。 

 また、“利用者がスパシーレに来館するたびに新しい楽しみがあるように”と、月ごとにマジックやホットヨガ、骨盤体操、フラワーバスなどのイベントを催した。さらに、雪や雨の日には「運転、お気を付けてくださいね」、サウナ利用者へは「水分補給を忘れないでくださいね」といった“ちょっとした”声掛けといったプラスアルファの接客も心掛けてきたという。 

 12年、スパライフ・コミュニケーションズの創立とともにスパシーレの支配人へと昇格。最初は“支配人”という肩書が重責に思えて少々不安ではあったが、“私が一番の年長者だから”と引き受けた。そして17年には取締役へと就任。温浴業界で女性管理職、ましてや女性の役員は珍しいそうだ。その分、会社名と顔と名前を覚えてもらいやすい、と角戸さんはポジティブに受け止める。
「大供社長が裁量を与え、仕事を任せてくれたからこそ、私がいます。今の目標は、部下が自分で考えて行動し、『仕事は楽しい』と実感できるような環境づくりをしていくことです」
と角戸さんは会社の将来を見据えつつ、後進の育成に力を込める。 

3.期待と信頼に応え、ひとつひとつの壁を乗り越えて管理職に

 角戸さんと共にスパシーレの運営を支えるのが、温浴部門マネジャーの井手正美さん、経営戦略室マネジャーの寺尾容子さんだ。角戸さんと同じくオープニングスタッフとして入社し、現在はマネジャーとして活躍している。  

 3児の母である井手さんは当初、非正規従業員として働いていた。子供の成長に合わせて徐々に勤務時間を延ばし、正規従業員、マネジャーと働くステージを変化させてきた。現在は、温浴部門マネジャーとしてスパシーレの看板である温浴業務を取り仕切る。

 新規イベントなどを開催する際には、部門一丸となって意見を出し合い、方向性や目標を設定していく。時には仕事に対する考えを部門内でうまく共有できず、もどかしい思いをすることもあるが、従業員同士で話し合いを重ねると、解決に向かう。
「大供社長から裁量を与えられ、『君ならできるよ!がんばれ!』と励ましを受けながら、部門一丸となって目標を達成するたびに、仕事におけるやりがいを感じます」
と井手さんは話す。 

 寺尾さんも子育てのため、週5日の夜勤時間帯のフロントを担当する非正規従業員として入社した。 

 エステ業界で働いていた経験もあり、12年のスパライフ・コミュニケーションズ創立時にはエステ部門を担当するマネジャーへと登用された。
「夜勤のフルタイムとして働いていたこともあり、マネジャー昇格時に違和感はありませんでした。大役を任せていただいたので、私ができることを真剣に取り組もうと意識して業務に当たりました」
と寺尾さんは話す。 

 現在、寺尾さんは経営戦略室マネジャーとしてスパライフ・コミュニケーションズにおける経理や事務関係を統括する。これに伴い、コミュニケーションの対象がお客様から従業員へと変化をし、今まで以上に内部に対して気を配るようになった。
「現在の目標は、チームワークを高めるため、会社の方針や大供社長の考えを従業員にきちんと伝えることです。そのための手段として、社内報の配布を検討しています」
と寺尾さんは意気込む。 

4.新卒女性が入社し、さらに働きやすい組織へ。いつまでも従業員と地域のために

 中学校の授業における職場体験で、スパライフ・コミュニケーションズを訪れたことをきっかけに、16年、17年と新卒の女性が続けて入社した。そこで、働きやすい職場をつくり、若手従業員をはじめとする就業継続が重要と考え、スパライフ・コミュニケーションズは18年12月に次世代法による「一般事業主行動計画」(※1)を策定した。19年中には制度の周知のためにパンフレットを作成し、従業員へと配布予定だという。

 「癒しを提供する場所なので、顧客満足度向上のためにも、まずは従業員が自分の仕事や生活を楽しんでほしい。そのためにも働きやすさの追求が大切と考えます」
と大供社長は話す。

 スパライフ・コミュニケーションズでは有給休暇の取得を促すため、各部門でシフト調整をおこない、17年には連続5日間有給休暇取得という目標を立て見事に達成した。しかし、18年は7月の豪雨災害の影響で諦めざるを得なかった。
「甚大な災害を受けた地域の皆様のためにできる限りのことをしたいと考え、災害直後も24時間営業を続け、お風呂を被災した方に無料でご利用いただいたり、給水拠点として開放しました。18年は業績も厳しく、連続した有給休暇取得は叶いませんでしたが、頑張ってくれている従業員のためにも19年は尽力します」
と大供社長は言う。地域と従業員を大切にする、経営トップの姿勢が伝わってきた。

※1 次世代法による「一般事業主行動計画」…次世代育成支援対策推進法に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、(1)計画期間、(2)目標、(3)目標達成のための対策およびその実施時期を定めるもの。従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられている(100人以下は努力義務)。

取材担当者からの一言

 スパライフ・コミュニケーションズの特長は、トップが男女また正規・非正規問わず裁量を与え、従業員への期待を伝えながらサポートし、中長期的な視点で従業員の成長を支援することだ。また、女性従業員はライフステージに応じて、無理なく仕事をしつつ経験を積み、子育てから手が離れた段階で管理職として活躍している。3名の女性管理職が次の世代を育てつつ、会社の経営をこれからも支えていく急先鋒になってくれるはずだ。 

●取材日 2018年12月

●取材ご対応者
株式会社スパライフ・コミュニケーションズ
代表取締役社長 大供 敬治 氏
取締役アジアリゾート・スパシーレ支配人 角戸 由美子 氏
温浴部門マネジャー 井手 正美 氏
経営戦略室マネジャー 寺尾 容子 氏

会社概要

株式会社スパライフ・コミュニケーションズ
所在地:広島県安芸郡坂町平成ヶ浜3-2-11パルティフジ坂 敷地内
URL:http://seare.jp/
業務内容:2012年に創立し、家族や友人と楽しめるアミューズメント性の高い温浴施設、アジアンリゾートスパシーレ(安芸郡坂町)、ぐらんの湯(福山市神辺町)を運営。温浴施設に集う全ての人々が「幸福感」を味わえること目指し、より良いサービスの提供のため、人材育成や働きやすい職場づくりに励む。
従業員数:75名
女性従業員比率:78.7%
女性管理職比率:50.0%
(2018年12月現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com