広島流通界の両雄、イズミとフジ 【後編】

スーパー業界事情

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合併、提携で潮目が変わる

  なぜ、ここにきて流通界で合併、提携などの動きがあわただしくなってきたのか。

  国内流通業で売上ランキング1位のイオンが10月、フジと資本・業務提携すると発表。これより半年前、2位のセブン&アイ・ホールディングスがイズミと業務提携。自主独立路線を貫いてきたイズミとフジが共に大きく方向転換した背景には、これから先の展望、既に大きく描かれている流通界の構図に沿って、ぞろぞろと表面化してきたようにも映る。

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  米国の流通界に学び、戦後間もない頃から食品売り場を併設した地域密着の、日本型スーパーマーケットを発達させてきた。その後はドミナント化、モータリゼーションに対応したショッピングセンターや、米国と同様にオープンモール化へと業態変更。

  しかし、手本とした米国の小売り大手のシアーズが、インターネット販売などに押されて10月に破産申請。一方で電子商取引(EC)のアマゾンが台頭。世界最大級の通販サイトを擁する同社が、ここにきて生鮮品の領域までも侵食してきた。新しい勢力のあおりを受け、まして時代のニーズに対応できなかったためか、スポーツ用品のスポーツオーソリティ、アパレルチェーンのザ・リミテッド、家電量販ラジオシャック、玩具のトイザラスなどが次々経営破綻を表面化させた。こうした米国の大きなうねりが、やがて日本に、中四国に押し寄せてくるだろうか。

  人口減と少子高齢化。さらにドラッグストアやディスカウントストアなどとの業態を飛び越えた、し烈な競争に加えてEC台頭などにより、大きく潮目が変わってきたのは間違いないだろう。規模拡大に突き進むのか、新たなマーケットを創り出すのか。これまでのような出店競争に明け暮れている余裕はない。経営合理化や物流効率化などを見据えれば、もはや単独で生き残ることが、難しい時代になってきたのだろう。

  イズミは2018年度から3カ年計画で、新規出店の加速ほか、ECへの参入、M&A強化を重点に掲げる。10月25日からは西日本のイズミグループ全193店舗とセブン-イレブン4087店舗を対象に、電子マネーの相互利用をスタート。自社ゆめカードとナナコカードの共同化でデータ戦略を強化し「高品質総合スーパー」を目指す。

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  フジは地元SMの買収や、売り場の商品をネットで注文する宅配サービスの強化、買い物弱者らを念頭に移動スーパーなどを打ち出し、小商圏へのアプローチにも乗り出している。高騰する人件費と物流費。商品調達や物流、金融面などのスケールメリットだけでなく、小回りの利く独自の優位性を築く作戦だ。

  イズミ創業者の山西義政会長は著書「道なき時代に、道をつくる」で、ワクワク感を持ってことに挑み、先の見えない日々に、何が何でも成し遂げてやるという信念と行動力が大切と述べる。

  流通界の両雄、山西会長とフジの創業を決断した故・尾山悦三氏は胸襟を開き、流通界の将来などを語り合ったときがあったろうか。戦後70年余。時代が移ろうと市場を制する鍵は消費者が握っているのは確か。奔流に巻き込まれて本筋を見失うことのないよう願いたい。