広島流通界の両雄、イズミとフジ 【前編】

スーパー業界事情

奔流を巻き込み新たな布陣へ

  弱肉強食の本能をむき出しに、中四国地方で熾烈な競争を繰り広げてきた流通界の両雄、イズミとフジ。ここにきて両社は全国規模の奔流を巻き込み、新たな布陣で対峙することになった。

  4月、イズミはセブン&アイ・ホールディングスと業務提携。これに応じるかのようにフジは10月、イオンと資本・業務提携すると発表した。

  これで「フジ・イオン中四国グループ」と「イズミグループ」の売上高の総額は共に7000億円超と拮抗してくる。これから中四国の覇権をめぐる両グループの戦術、戦略がどのように展開されるだろうか。はや流通界では「いつ、どことどこが提携、合併するのか」などとまことしやかに流布されており、新たな段階へ突入しつつある。

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  両社の源流は、戦後の闇市にさかのぼる。イズミ創業者の山西義政会長は広島駅前の闇市で露店を開く。戸板の上に並べた干し柿が飛ぶように売れた。それから衣料卸の山西商店を経て、1961年にイズミを設立。現在の中区新天地に開いた1号店(八丁堀店)は大盛況となり、その後の突破口を開いた。積極果敢な勝負に挑んで容赦なく力攻めに押し切り、今は中四国、九州へ191店を展開、グループ売上高は7298億円。西日本の流通界を凌駕する大きな飛躍を成し遂げ、さらに2022年度に売上高1兆円の旗印を掲げる。

  フジ創業者の故・尾山悦三氏は戦後のせり市で商売人のスタートを切り、やがて繊維問屋の十和(現アスティ)を発足。先駆のイズミに遅れること6年、1967年にフジを設立。十和の取引先に配慮して愛媛県宇和島市に1号店を開いた。初日の来店客数は1万5000人。小売店チェーン戦略の手応えを得て、その後に広島へ上陸。現在は中四国に96 店舗を展開し、売上高は3166億円。

  イオン傘下のマックスバリュ西日本は10月、広島電鉄子会社の市内5店舗を継承。2021年春には山陽マルナカ(岡山市)とマルナカ(高松市)を吸収合併。イオン中四国グループとフジを合わせると、売上高の総額は7100億円に上る。

  戦後から今日までの両社の軌跡は、各シーンで重なりあいながら競ってきたが、強烈な個性を発揮した創業者の考え方、経営観などがこれまでの出店戦略や店舗づくり、社風などに少なからず影響を及ぼしているように映る。時代の要請に応えてそれぞれが変貌を遂げてきたが、ここにきて両社が大きな転換期にさしかかり、新たな布陣で対峙するシーンを迎えることになった。両社を取り巻く、人口減少や異業種からの参入などの難問、難関をどのように乗り切っていくだろうか。

  すでに大手商社などの手で流通界の大きな構図が描かれているかもしれないが、その具体的な姿は、まだ予断を許さない。山西会長が商いの考え方をつづった著書「道なき時代に、道をつくる」(14年発刊)で、「先が読めない時代こそ面白い道を、自分で描ける。普通ならひるむほどの高い目標を、戦国武将の旗印のように雄々しく掲げることが大事。それが社外の人まで巻き込んでいく旗印になる」

  全軍の士気を鼓舞する指揮官の気迫がすごい。両社を取り巻く動きなど、次号で。

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