大津建設株式会社
~選ばれる中山間地域企業へ 専門家支援でデジタル技術の活用加速~
◆◇◆ 企業を変えるテレワーク ー 県内企業の挑戦 ー ◆◇◆
ICTを活用して場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実現する「テレワーク」。広島県は、感染対策だけではなく、個人のライフスタイルに応じた柔軟で自律した働き方を普及するために、県内企業向けにテレワークに関する導入支援策を展開しています。この連載は、テレワーク導入事例5社と各社の導入を支援した専門家に取材し、導入の利点やポイントなどを紹介します。大津建設 熊本 孝司 代表取締役に取組の背景やポイントを伺いました。
テレワークに取り組んだ背景は。
県北エリアで建設業を営む当社は、紙で情報管理する体制が続き、データの活用や管理で非効率的な面があった。また人材確保に苦戦してきたこともあり、会社としてICTツールの活用に本腰を入れ、労働生産性を高めながら社員が働きやすい環境をつくらなければならないと考えた。そこで2021年頃からペーパーレス化、クラウド化といった業務改革に取り組んできた。
どんな取り組みを進めていますか。
情報システム部やIT技術者がいないため、外部の専門家の支援を受けることから始めた。まずは助言を受けて、現状の業務の把握と見直しを行った。従業員同士でデータ共有ができておらず、異なる部署でデータを二重で入力するなどの問題点があり、資材の予算管理を担う工務部と経理担当者で定期的に話し合いの場を設け、業務をスリム化した。
次に、その中からデジタル化できる業務の選定を行った。その結果、工事に係る一覧や台帳の情報管理など、複数の業務が該当することが分かり、それらの業務に適するソフトウェアの選定と検証を実施。今後導入を予定しているクラウドシステムとの連携性や費用対効果の視点から、時間をかけて検証を重ねた。
具体例としては、工事原価管理システムにクラウドサービス「ミヤシステムA(エース)」を導入。現場の進ちょくに応じて、実行予算の管理が容易になり、作業効率が格段に上がった。普段から使っているスマートフォンから工事に関わる予算などの閲覧や必要事項の入力も行え、使い慣れているスマホを活用し、コストを抑えながら従業員の利用を促すことができた。さらに、現場から作業日報の入力やスケジュール管理するグループウエアを試用し、本格導入に向けて検討を進めている。
取り組みにあたってのポイントは何ですか。
県から派遣された専門家(ITコーディネータ)によるサポートを受けたことが大きい。元々、業務のデジタル化は進めていたが、必ずしも生産性向上に直結していなかった。専門家の支援によって、業務の現状と課題を客観的に把握し、他業界の事例も含めた多様な解決ノウハウや助言をもらえたことは貴重だった。
私自身、企業にとってDXは避けては通れないものだと捉えている。人材や資金が十分でない中小企業にとってハードルが高いように思えるが、外部の専門家のサポートをうまく活用すれば、取り組みは加速する。経営者が覚悟を持ち、「思い切ってやってみる」姿勢で取り組むことが重要だと思う。
導入後の変化・メリットを教えてください。
当初の目的としていたデータの活用や管理が効率的になっただけでなく、在宅勤務が可能な環境整備が進んだ。これにより、感染症予防に加え、従業員のライフスタイルに合わせた働き方の選択肢を増やすことができた。
将来的には、移動を伴う作業を軽減するため、写真や映像を使って遠隔で建設現場に具体的な指示を出すなどの取り組みも進めたい。またリモートで熟練者が作業を支援することで、若手が現場で経験を積む機会が増えるため、即戦力としての育成にもつながると思う。
今後もデジタル技術の積極的な活用で、さらに生産性や柔軟性の高い働き方を実現し、「県北にも魅力ある企業がある」と認知されるよう取り組んでいきたい。
社員の声
デジタル化を任され、日々の仕事の合間を縫って、工程表や勤怠管理などさまざまな業務の効率化を進めています。業務の洗い出しなど地道な作業に苦労もありましたが、その分課題を的確に分析でき、成果につながったと思います。全社に取り組みを浸透させるには、推進担当者が率先して新しいシステムを利用し、活用のメリットを示すことが大切だと実感しました。
取材日:2023年1月
会社概要
大津建設株式会社
所在地:〒728-0014 広島県三次市十日市南1-5-30
URL:http://otsu-co.jp/
業務内容:建設(土木工事業、建築工事業など)
従業員数:32人(男性30人、女性2人)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍 取組サポートサイト「ヒントひろしま」http://hint-hiroshima.com)