中期経営計画に働き方改革を加え、取組を加速化
産休・育休など制度整え、女性活躍を推進

株式会社共立

取り組んだ背景 ~業界全体の課題解決と、若手人材の採用・定着を目指す

 1937年に創業し、広島県を中心に中四国地区で分譲マンションや公共施設などの建築、耐震化工事などを手掛ける。建設業界では「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージも根強く、また、人材不足が続くなど大きな課題を抱える。代表取締役の温井賢治氏は
「この業界は労働時間が長く、休みをとりづらいと言われていますが、当社では以前から従業員が安心して仕事ができる職場づくりに取り組んでおり、徐々に成果も出ていました。しかし、安定的な採用や定着、継続的な企業の成長のためにも、更なる取組の必要性を感じていました」
と取組の背景を話す。
 そこで、温井氏が主導する形で2015年、「法令順守」「採用活動の強化」「従業員のワークライフバランス向上」の3つの実現を目指して、働き方改革に取り組むことを従業員に宣言し、更に取組を加速させることとした。

主な取組と工夫点

◆中期経営計画に働き方改革を盛り込み、社内に浸透
 創業80周年を迎えた17年に、10年先を見据えた長期計画を策定。課長クラスを中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、17~19年度の第1期中期経営計画に続く第2期中期経営計画「KYORIZM2.0」を20年3月に策定した。中期計画の中に、長時間労働の削減や有給休暇の取得など、働き方改革の推進を盛り込んだ。総務部部長の前田恭男氏は、
「社内の横断的組織で自ら作り上げた経営計画の中に働き方改革を位置づけることで、全社一丸となって働き方改革を進める狙いがありました」
と話す。実際に、部門間で意見交換や問題点を指摘し合う雰囲気ができてきているという。

◆有休取得や長時間労働改善のために個別面談を強化
 有休の取得促進や残業の削減を推進するにあたり、従業員から「工期内に仕事が終わらなくなるのではないか」といった不安の声が上がっていた。そこで、中期経営計画策定メンバーが、全従業員と複数回の個別面談を実施。特に現場従業員は、日頃本社と離れた工事現場などで働いていることから、重点的に面談を実施した。定例の面談とは別に、部門長による現場訪問や本社での部門会議などさまざまな場面で部門長から積極的に声かけをし、現場従業員とコミュニケーションの時間を取るようにした。面談で出た意見を基に、現場の写真整理にソフトを導入するなどICTツールを活用した業務の効率化を進め、有休の取得や残業の削減に対する従業員の不安を解消するようにした。
 また、有休の取得や残業の削減には、社外の理解が欠かせないため、発注業者に対して余裕のある工期設定を依頼するなど、社外も巻き込みながら取組を進めていった。

◆試験勉強など具体的活用法を呼びかけ、有休取得促す
 有休の取得を促すため、年度始めに管理職をはじめ従業員全員が10日間の取得計画を提出。管理職が率先して休むことで休みやすい雰囲気を醸成するとともに、部下の取得状況を管理するようにした。19年には、さらに取得しやすくする目的で半日単位の有休も制度化した。また、1級建築士、1級施工管理技士などの資格取得を目指す若手従業員には、資格試験前に勉強のための有休取得を呼びかけるなど、具体的な活用方法を伝え、有休の取得を促している。実際に、試験直前に1週間程度休み、資格試験の勉強に専念する従業員が出るなど成果につながっている。

◆産休・育休制度を即整備、2人が取得
 女性の活躍が企業成長につながるとの考えから、女性が働きやすい環境整備にも力を入れている。これまで女性は結婚後に辞めることが「当たり前」という業界であったというが、直近3年間で2人の女性が結婚したことをきっかけに、産休・育休に関する規定や制度を19年に新設した。
 併せて、各部署で事務などに従事していた従業員を総務部に集め、リーダーが中心となって多能工化を推進。互いの業務を教え合い、いつ誰が休暇を取っても業務に支障がないような体制を整え、安心して休みを取ってもらえるようにした。前田氏は
「定期的な面談では、彼女らに会社として長く働いてもらいたいという思いを伝えてきた。従業員の結婚をきっかけに産休・育休などの制度を素早く整えたことも信頼につながっているようです。これまでに2人が産休・育休を取得し、職場復帰後には短時間勤務制度を利用しています」
と話す。

取組の中で苦労したこと ~休みづらい、休むと工期に間に合わないとう不安の払拭

 長年の業界の特性から、休みを取ることへの罪悪感が根付き、その意識の払拭に苦労したという。そこで、働き方改革の3つの目的である「法令順守」「採用活動の強化」「従業員のワークライフバランス向上」について、社長は管理職に、管理職は部下らに、何度も説明し思いを伝え続けたという。それにより、徐々に効率よくメリハリをつけて仕事をし、時間外労働を抑制しようという意識に変わってきたという。

取組の成果~日曜日出勤が激減、効率化への意識が高まる

 休日出勤や残業を削減する取組などが成果を挙げ、日曜日の出勤日数は18年に前年から約30%、19年は同6%削減した。成果が現れたことで取組への士気も高まり、全従業員の平均有休取得率も17年度の35%から、18年度47%、19年度50%と年々上昇している。

課題や今後の目標 ~誰もが働きやすい環境整備へ

 安定的な採用や定着、そして企業の成長のために、女性、若手、高齢者など誰もが働きやすい環境整備を目指す。例えば、女性の働きやすさを向上するため、現場事務所内に更衣室や女性用トイレの設置を計画。人手不足を補いながら若手を育成するために、高齢のベテラン従業員の再雇用などを進める。これに加え定年60歳を65歳に延長する場合、給料を極力下げない、健康診断や人間ドッグの受診費を会社が負担するなど、より良い条件を整える。業界では難しいと言われている完全週休2日制の導入も目指す。温井氏は
「建設業は設備を持たない会社なので、会社の成長には人の力が重要。若手人材を採用し、有資格者に育てるなど人材育成に力を入れたい。そして、従業員にとって働きやすい、また働きがいのある会社にしていきたい」
と今後の展望を話す。

従業員からの評価

営業技術部 営業技術課
岩本 由貴氏
 女性は結婚したら退職するというイメージが長らくありましたが、会社に相談したところ、育休などの規定の見直しや制度の新設などすぐに対応していただき、安心して出産や子育てに専念することができました。会社は、女性活躍を見越し、女性従業員を新たに複数名採用していましたので、私の休暇を穴埋めするための一時的なパートタイム従業員を採用する必要もありませんでした。今後、誰が休んでも対応できるような体制が整いつつあります。社内の変化を感じ、会社への信頼感も増しました。今は子どもが小さいので難しいですが、将来は資格の勉強をするなどキャリアアップを目指したいと思います。

取材日 2021年2月

会社概要

株式会社共立
所在地:広島市中区大手町4-6-16 山陽ビル5階
URL:https://www.kyoriz.co.jp/
業務内容:土木建築工事など
従業員数:83人(男性74人、女性9人)
(2020年12月末現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com