戦後の復興支えた車メーカー
被爆80周年に広島の誇り示す
前向きに生きる人の輪広げる

マツダ株式会社

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 世界に年間120万台の自動車を供給し、人間中心の開発哲学や走る歓び、魂動デザインなど独自のコンセプトで存在感を示す。国内上場企業の売上高で40位以内にランクするグローバル企業である一方、地元広島に根差した姿勢を重視している。
 2025年は被爆80周年。社史をひもとけば、1945年の原爆投下に関する印象深いエピソードがある。「本社敷地内の付属医院は負傷者であふれ、生き残った社員は悲嘆と虚脱を振り払い、負傷者の介抱にあたった。倉庫の医薬品は全て提供し、食堂や寄宿舎を開放。比治山が壁となり壊滅を免れた社屋を間借りしたいと、県庁や地元企業から相次いで要望があり、自社の操業再開にも目途が立たない状況であったが、社長の松田重次郎は二つ返事で受け入れた。決して広くはない社屋に官民入り交じって人々がひしめき合う。困ったときの助け合い。人の心のごく自然な振る舞いだった。焼け野原になった町を見つめる重次郎にとって、この奇跡だけが希望の光だった。この出来事を境に、東洋工業(現マツダ)と郷土広島とのきずなは、揺るぎないものになっていった」
 終戦直後の混乱の中、わずか4カ月後に三輪トラックを生産。ある者は復旧ままならない鉄道を乗り継ぎタイヤを求めて九州へ出向き、ある者は燃料タンクを譲り受けて鉄板を切り出した。希望が実を結んだという。皆が力を合わせて復興の原動力を生み、資材輸送などを下支えしながら経済再生につなげた。当時の海外向け三輪トラックのパンフレットでは「a pride of Hiroshima!」と自信を示しており、その鮮やかな文字が目を引く。
 戦後間もなく地元の主要企業と共に「二葉会」を立ち上げ、カープ設立に出資するなど地域活性化に貢献してきた。市民がたる募金で支えた旧市民球場跡地では現在、プライドオブヒロシマ展が常設されている。

前向きに生きる人の輪

 同社は2030年ビジョンのパーパス(存在意義、役割)に「前向きに今日を生きる人の輪を広げる」と掲げ、ユーザーへの直接的なメッセージ発信を強めている。23年11月にブランド体験推進本部を設置。カーライフをイメージしてもらえるように会員サイトでオーナーの声を紹介するほか、コロナ禍で休止していたファンフェスタや本社開放日などを再開した。また、車やモータースポーツの楽しさを伝える新会社の設立を予定している。長年マーケティングやブランド推進を統括してきた毛籠勝弘社長は「〝移動体験の感動〟を生むことが使命だと考えている」と意気込む。

過去最高の決算

 24年3月期連結決算は売上高が前期比26%増の4兆8277億円、営業利益は76%増の2505億円、純利益は45%増の2077億円で、軒並み過去最高を計上した。日本や欧州で扱う「CX-60」、北米などの「CX-90」といった高単価のSUVが好調で、世界販売台数は12%増の124万台。
 24年中に「CX-70」「CX-80」を発売予定で、ラージ商品群の4車種が出そろう。25年3月期は世界販売140万台を見込む。確認できる1997年3月期以降でそれぞれ最大となる設備投資1700億円、研究開発費1600億円を計画。電動化を進めていく。





会社概要

マツダ株式会社
本  社:安芸郡府中町新地3-1
設  立:1920年1月
資 本 金:2840億円
売 上 高:4兆8277億円(2024年3月期連結)
従業員数:4万8481人(連結)
事業内容:乗用車・トラックの製造、販売など
T E L:082-282-1111
U R L:http://www.mazda.co.jp
※2024年9月当時の情報です。