広島アルミがAIで技術継承
県ワークショップ 参加、知見集約サイト構築へ

広島アルミニウ ム工業

 自動車部品製造の広島アルミニウム工業(西区横川町、田島文治社長)は砂型鋳造の中子造型工程を皮切りに、熟達者が経験や勘で培ってきた不良対策技術や専門知識などの知見をAIでデジタル化し、技術情報として共有・検索できるポータルサイトの構築に乗り出す。広島県が2018年度から推進するAIやIoT(もののインターネット)の実証プロジェクト「ひろしまサンドボックス」の一環で立ち上げた「技能継承のためのAIワークショップ」に参加。知見の〝辞書づくり〟をスタートさせる。
 1921年の創業から続く伝統的な砂型鋳造は、全国的にも同社含め2社しか手掛けていないという。コスト競争力と少量多品種生産に対応できる生産技術で、同社の強み。エンジン関連部品などをつくる中空の鋳物製造(中子造型)には砂型鋳造の技術が必要だが、その技術は感覚に頼る〝コツ〟が重要で継承が難しいのが実情。19年に8回にわたり参加したワークショップで、自社の課題分析やAI活用案の抽出、AI活用の事例見学、知見の抽出実践、思考回路を言語のネットワークで表すブレインモデルの作成、データ分析による要因の抽出・解析などのカリキュラムをこなした。同社のほかエネルギー関連や産業用機器メーカー、大型機械メーカー、金属加工の5社が参加。各社ともAIを活用し、ロス率を抑えた品質の安定化、熟練者の技術継承、工場設備の不具合の予兆検知などの課題解決に取り組む。
 広島アルミは4月中にスペシャリストの思考のAI化と実務適用支援のLIGHTz(茨木県つくば市)と契約。ワークショップの運営は同社による。砂型鋳造の担当者は「砂の水分量や粘土を感じ取って配合を決めるが、これを伝える側、教わる側の双方に非常に難しいハードルがある。これまで無縁だったAIの考え方と使い方を学び活用する端緒についたばかりだが、製造環境の異なる複数工場で同じものをバラつきなく、大量につくるにも熟練者の専門知識を各部署で共有しながら100%良品になる管理体制を確立していきたい」と話す。作業効率化や働き方改革と並行しながら、現場責任者を対象にサイト構築を進める方針だ。