育成・評価制度を見直し、モチベーション向上
勤怠管理システムやスマートメーター導入で業務効率化
広島ガス住設株式会社
取り組んだ背景 ~会社の永続的な存続と発展へ、組織体制の構築に着手
1963年の創業以来、県北部地域へのプロパンガス供給を主軸に、地元密着型の企業として建築や不動産など幅広く事業を展開する。前社長の急逝によって代表に就いた代表取締役社長の池岡憲司氏は、
「当社のように不測の事態により、会社はトップが突然交代することがあります。そのとき、組織としての堅固な体制があるかどうかが、将来の存続と発展に大きく左右します。もしトップが変わることで評価などの制度もコロコロと変わってしまうようでは、会社にとっても従業員にとっても好ましくありません。私にもいつかは代表を引き継ぐ日が訪れるので、明確な基準を設ける必要があると思いました」と振り返る。
当初は最小限しか定めていなかった評価や等級などの各種制度を自身の手で整えようとしたものの、「発展していく企業の重要な制度を整えるのに、その場しのぎであってはいけない」と、5年前に社労士に相談し、ひとつひとつ整備していった。
主な取組と工夫点
◆デジタル化で勤怠管理や現場業務を効率化
勤怠管理を引き受けていたベテラン従業員の退職を機に、事務処理全体のデジタル化を推進。18年には指紋認証に対応した勤怠管理システムを導入し、有給休暇取得などすべての申請をクラウド上で行える体制を整備した。
また、今後の人手不足を見据え、複写シートに手書きしていた顧客のガス設備の調査点検を、タブレットを使った電子システムへ移行。大幅な時間短縮につながった。さらに、現地に赴いての確認を必要としない、通信を利用したスマートガスメーターを導入。現時点の導入状況は全体の25%程度だが、今後さらに導入地区を拡大する方針で、現場作業でも全体的な仕事量の削減に取り組んでいる。
◆時間外勤務の削減へ、算定方法変更や声がけ
ガスというライフラインを扱うため、終業時間近くに顧客からの連絡があり、対応することも多い。以前は時間外勤務を30分単位で計算しており、その30分が経過するまで仕事をするという声が挙がっていた。そのため、計算単位を15分に変更。時間外勤務の多い従業員には事業所長が一人ずつ声をかけ、作業効率について一緒に考えるなど個別のケアを行うことで、時間外勤務は削減されつつあるという。
◆オリジナル研修で従業員のやる気を醸成
「一人一人の成長が1つの塊となり、会社全体の発展への力になる」という信念から、社労士とともに社内での課題や時勢を取り入れたテーマを選んで、オリジナルの研修を企画し、年に6回実施している。4年前のスタート当初は事業所長以上の「社員を評価する側」の社員に向け、会社の土台を担う人材としての心構えについての研修からスタート。徐々に一般従業員に対象を拡大している。講師が提起した内容について班ごとに解決法を探り発表するなど、ロールプレイングも取り入れた能動的な研修がモチベーションや責任感の向上につながっている。
また、業務上の課題に直面した際、受講者それぞれが研修のテキストを見直し、解決法を見出しているという。最近では上司と部下の間のコミュニケーションの取り方に焦点を当てたパワーハラスメントに関する研修も開催している。
◆成長支援シートで目標を設定、達成率を給与や賞与に反映
半期ごとに「自身の成長や業務の目標」、「上長からの期待項目」、さらに「従業員全員の共通項目」の3つについて、上長との面談の上で設定する「成長支援シート」制度を設けている。達成・未達成を明確にするため、目標は受注数など具体的な数字で記入。期の終わりには、自身と上長からの評価などから昇給号数を決め、給与に反映する。目標の達成が昇給という成果につながり、次の期ではさらに上の目標へ挑むなど、意欲の向上につながっているという。年に2回の面談は、日頃業務の中で抱いている疑問や課題について直接話し合うことができる場としても役立っている。
また、各事業所別での利益目標も設定。結果はプラスマイナスで公表され、達成度に応じ、賞与に反映する。これが、それぞれの事業所の結束力・連携力を強め、個人のモチベーション向上にもつながっている。
取組の中で苦労したこと ~じっくり説明、新システムは仮導入期間を設定
数年で一気に変革を進めたため、物理的な面でも心理的な面でも戸惑った従業員は一定数存在した。しかし、新しい制度やシステムを導入するたびに、役員、事業所長、一般従業員と段階を踏んで説明を徹底。大きな変革であった評価制度については、社長自らが説明を行うことで理解を促した。
指紋認証を利用した勤怠管理システムなど、物理的な新制度の導入についても、当初は利用方法に悩んだり、表示がうまくいかなかったりと不具合があったものの、半年間は仮導入期間という位置づけで取り組んでもらうことで、その後はスムーズに利用されるようになった。
取組の成果 ~時間的余裕が効率化を加速、業績も向上
個人と事業所の目標やその達成状況を明確化したことで、仕事への意欲が向上。見積もりなどを行う際、従業員一人一人が数字に関してこれまで以上に目標を意識して考えるようになったという。
また、デジタルを導入して現場業務のスリム化を進めたことで、時間の余裕が生まれ、事業所内で業務の分散ができるようになった。さらなる効率化について考える余裕も生まれているという。モチベーションの向上や業務効率化が奏功し、19年度には過去最高の売上高14億2000万円を計上し、右肩上がりを続けている。
課題や今後の目標 ~年間休日100日実現へ、効率化を推進
次の目標として、現在93日の年間休日数を100日にまで増やすことを挙げる。今後、スマートガスメーターなどのさらなるデジタル化を含め、実現へ向けて業務の効率化を進めていく方針という。池岡氏は、
「これから働き手が不足する時代が来るというのは、避けられない現実。将来人材を獲得できなくなるなら、今のメンバーでより意欲的により効率的に働いて、ガスというライフラインを支えなければならない。人口が減っていく中山間地域の中で地域の人を支えながら、さらに顧客を増やしていかなくてはいけないというミッションもあります。競合他社にサービスで打ち勝つためにも、これからも社内体制をさらに整えていくつもりです」と話す。
従業員からの評価
東城販売課
西村 博伸 総務・経理課長
入社して25年になるのですが、池岡社長が先頭で舵を取るようになってから、会社が急激に変わったと感じています。それまで創業当時の面影を残し、毎年変わらないまま働き続けているという感覚でしたが、目標を数値で立て、それを達成するという仕組みは、従業員の仕事への意欲を大きく変えたと思います。事業所内の雰囲気が力強く、そして積極的になりました。
また、各事業所でデジタル化、クラウド化を進めたことが時間的にも精神的にも余裕をもたらし、互いをサポートし合って一緒に目標を目指すという連帯感にもつながっています。
取材日 2021年2月
会社概要
広島ガス住設株式会社
所在地:庄原市東城町川西856-1
URL:http://www.hirogas-jyusetsu.jp
事業内容:LPガス販売、管工事、建築・増改築工事、電気工事、不動産
従業員数:60人(男性38人、女性22人)
(2021年2月時点)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)