女性従業員のための改善が、
商品価値や企業イメージの向上へ

アイメディア株式会社

1.「女性従業員比率は高いが、女性管理職比率が低い」
という課題解決を目指して

 「卸売及び小売業」における、広島県の女性従業員比率平均が30.4%(※)であるのに対し、アイメディア株式会社(以下、アイメディア)は71.6%と約40ポイントも上回っており、女性従業員比率が非常に高い。非正規従業員における女性従業員比率が高い(全体の57.3%)ということも引き上げ要因の1つとしてあるが、正規従業員についても約半数が女性である(正規従業員全体の42.1%)。役割分担としては、正規従業員が本社機能を担い、非正規従業員は流通センターやショッピングセンター等にあるテナントでの販売業務に従事する。

 女性従業員比率が高いにもかかわらず、アイメディアには平成26年まで女性管理職が1名のみであった(平成29年8月現在は2名)。これには女性従業員が結婚・出産で辞めてしまう、管理職になりたがらないという背景があった。

 そこでアイメディアでは「ワークライフバランスを意識した健康的で働きやすい職場環境づくり」、「女性管理職比率の向上」の2つを目標に掲げ、女性管理職である長尾氏、山西氏を中心にいくつかの取組を開始した。まずは“職場環境づくりから”ということで「制度周知による産休育休取得の促進」、「業務の効率化」に力を入れ、その中で“女性管理職から後輩に対する意識啓発”も行っている。これらにより、今後、女性管理職比率を向上させる狙いだ。取組により、女性従業員の定着だけでなく、同社が扱う商品価値の向上や新たな商品・サービスの開発といった効果が現れてきたという。

※出典:広島県(平成29年3月)「広島県女性活躍推進企業実態調査」

2.制度周知により、産休育休取得や
復帰後の時短勤務制度利用者が100%に

 同社はベンチャー企業らしいフラットな社風で、男女の区別なく役割や業務が与えられる職場であったが、長時間労働が多かったことから、女性が家庭と両立しながら男性と同じ量の仕事をこなすことは現実的に不可能だと考えられており、ライフイベントである結婚や、妊娠・出産における離職率が高かった。

 しかし、そのような環境でも仕事を続けたいと考えていた山西氏は、同社で初めて産休育休を取得した。しかし、当時はまだ前例がなく、会社側も復帰直後の女性従業員の状況について理解がなかったことで、子供が病気になっても休みにくい等、ワーキングマザーにとって働きづらい職場環境であった。

 管理部に所属する長尾氏は、そんな山西氏の大変な状況に心を痛めていた。
 その後、自身が産休育休取得後に復帰した際、「せっかく両立制度があっても会社からの周知が不十分で女性従業員に認知されていない。また、取得する雰囲気にないことが原因で辞めてしまうのではないか」と分析。長尾氏が管理部総務担当に就任して以降、広島県の両立支援セミナー等で情報収集しながら後輩の女性従業員に両立制度の周知を図った。もともと女性が多い職場であるので、社内での自然なコミュニケーションを通じて浸透させることは難しくなかった。

 具体的には、年度の途中では保育園への入園が難しいため、1年以上の育休を取得した後4月のタイミングで復帰できるよう案内、手配をしたり、小学校入学初期まで時短勤務制度の利用が可能である等の制度を周知。両立制度を取得しやすい雰囲気を醸成し、ワーキングマザーにとって働きやすい職場環境をつくっていった。

 さらに、時間単位での有給休暇を、理由を問わず取得できる制度を整備し、山西氏が経験した「家庭の事情を理由に休んだり、早退すると言いにくい」雰囲気を軽減した。その結果、夫の転勤等のやむを得ない理由を除くと、出産を機に退職する女性従業員はほとんどいなくなり、産休育休取得率は100%、復帰後の時短勤務制度利用者も100%と女性が定着する職場となった。ここ数年で、女性従業員のうち半分が子育て世代の30~40代となり、制度整備や周知の効果が見えてきている。

3.「情報のデータベース化」が
「誰もが引き継げる環境整備」の糸口に

 産休育休、時短勤務の取得率が増加するにつれて避けられなくなった課題は、「誰がいつ休んでも対応できるような仕組みづくり」だった。特に、アイメディアでは月に10~20種類の新商品を生み出し、常に400~500種類の商品を取扱う。ジャンルもサニタリー・キッチン・収納・ヘルス&ビューティーと非常に幅広い。仮に1人だけがある特定の商品情報を知っていると、その従業員がいない時に取引先からの連絡やクレームが入った場合に対応が遅れてしまう。

 そういった問題を解決するための糸口となったのが「情報のデータベース化」だ(図1参照)。ある商品に対して行った処理や対応結果を、その都度データベース上に記録しておくことを義務付けた。すると、商品コードで検索をかけるだけでその商品がいつ廃番になったか、いつクレームが来たか等の商品に対する履歴や情報を共有できるようになった。この「情報のデータベース化」により、誰もが自信を持って取引先や顧客に対して対応することが可能となったり、スピーディな対応、説明等により取引先からの評判や評価が向上したという。

 さらに、引き継ぎ業務の負担を軽減するため、複雑であったシステム操作を簡易にしたり、ジョブローテーションにより複数の業務が担当できる従業員を増やし、休職・異動等があっても業務がスムーズに引き継げる環境を整備している。

図1 「情報のデータベース化」の仕組み

4.家事と仕事の両立がもたらした
“商品価値の向上”という成果

「志を持って入社したのに結婚・出産で夢だった仕事をあきらめてしまうのはもったいないですよね。逆に、結婚・出産も経験値として成長の機会にしてほしいです」
と語る山西氏。現在のように女性従業員の復帰率が向上したのは、山西氏・長尾氏による環境整備と、2人の「ロールモデル」としての活躍が非常に大きい。「自分が無理をしすぎると『管理職って大変そう』だという不安を後輩に与える可能性がある」、「自分たちのつらい経験を後輩にはさせたくない」と、女性従業員が周りに相談しやすい環境をつくり、残業はしない・させない、子供のイベント等では積極的に休む等、自らがあるべき姿を体現するよう努めている。 

 そんな2人の働くスタイルを後押ししているのは、米又社長だ。もともと男女の区別なく優秀な人材を活用したいという考えの米又社長は、女性の活躍推進を経営課題として重視してきた。また、自身も家庭で家事や育児をしながら自社の商品を試して開発会議を主導している他、会社の忘年会等も子供の同席が認められているので、社長も子連れで参加しているという。

 出産後の復帰及び定着は、従業員へのメリットだけでなく、商品価値の向上という成果ももたらしたそうだ。同社の重要部門である開発部には女性従業員と男性従業員を半々に配置しているが、普段の暮らしの中で生まれる「もっとこんなものがあったら良いのに」という気付きから、新たな商品・サービスが生まれることもある。実際に家事をしながら自社製品を使用することで、実質的に従業員自身がモニターとなり、自身が納得するものだけを商品として売ることができる。それは結果的に会社の売上にも貢献することになるのだ。また、「女性が活躍できる会社」ということをアピールすることで、採用面においても有利になってきたと感じている。

 女性の産休育休取得や定着といった問題が落ち着いてきた今、次は「男性の育児休業取得」及び「介護休業制度の利用促進」という課題に取り組んでいきたいと考えているそうだ。現状、前者は各家庭の所得の関係から、制度や風土だけの課題ではないことを把握。また、後者は法定内の休業のみでは仕事との両立が難しいといった課題があるため、今後真剣に向き合い、対応を進めていきたいとのことだ。

取材担当者からの一言

 アイメディアでは、女性管理職自身がロールモデルであることを意識し、家庭と仕事を両立しながら「生き生きと楽しんで働く姿」を後輩に見せている。そして、それを見た女性たちが「長く働き続けたい」と思える雰囲気を自然に醸成している点が特徴的だ。また、ベンチャー企業ならではの風通しの良い社風だからこそ、従業員のチャレンジを経営陣がすぐにキャッチし、制度整備を行うことができている。社長自らも育児や家事に関わることで家庭との両立に対する理解が深いのだろう。今後は、課題として認識されている男性従業員の育休取得に向けて、意識改革や仕事と家庭との両立が進み、パパ目線でのヒット商品も生まれていくのではないかと感じている。

 ●取材日2017年9月
 ●取材ご対応者
 管理部 マネージャー 長尾 美樹子 氏
 企画営業部ネット通販グループ マネージャー 山西 美奈子 氏

会社概要

アイメディア株式会社
所在地:広島市東区若草町12-1 アクティブインターシティ広島9階
URL:https://www.aimedia.co.jp/
業務内容:生活雑貨類の製造・輸入・販売、アイデア商品の催事企画・運営及び生活雑貨小売店舗の運営を行っている。 1975年に日用雑貨の実演販売「ヒロセン商会」を創業し、1981年に「アイデア日用品雑貨:催事販売」を企画、中四国の量販店で販売を開始した。その後、業務を全国各地に展開し、1994年に「アイメディア株式会社」に社名変更。現在は生協・通販・ホームセンター・ドラッグストア等への商品販売を中心とした事業を行っており、全国に7店舗のショップも展開している。また、シンガポール、マレーシア、中国、香港、台湾に海外子会社を有し、海外進出も果たしている。
従業員数:169名
女性従業員比率:71.6%
女性管理職比率:25.0%
(2017年8月現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com