Vol.17 地質調査技士 ～地質調査・土質調査等の調査業務全般を行う専門技術者～［加藤ボーリング株式会社］

地域インフラ整備 ･ 維持の担い手であり、地域社会の安全 ･ 安心の確保を支える国土･地域の守り手でもある建設業は、我が国の基幹産業として重要な役割を果たしています。建設現場の最前線で活躍されている様々な職種の建設職人や技術者にスポットを当て、地場建設産業の魅力の一端をご紹介します。（広島商工会議所建設業部会）

地質調査技士 加藤ボーリング株式会社
閑治谷 剣さん

ーどんなお仕事をしていますか。 道路やトンネル、ダム、堤防、大きなビルやマンションなどを造る前には、そこの地盤の強さや種類を知る必要があります。地盤の強度を調べるボーリング調査をはじめ、地質を調べる調査業務全般を地質調査といい、地質調査業務が私の仕事の基本です。
できるだけ安心・安全な構造物を建てるためには地質調査業務が必要で、私たちが地質調査をしなければ、仕事は始まりません。地質調査の結果によって、その後の工法も変わってくるため、とても重要な役割になります。

ー自己紹介をお願いします。 入社して８年です。もともとモノづくりは好きでしたが、前職は体育の教員で、この業界に関する知識は皆無でした。高校時代のラグビー部の先輩が経営する会社に入社することになり、仕事の内容は聞いたのですが、具体的にイメージしづらく、入社後２・３カ月はよく分からないまま上司や先輩に言われる通りに動いていたように思います。
仕事は、基本的には機械を操作するオペレータと助手の２人１組で行います。私の場合は約１年間助手を務めた後、オペレータになりました。オペレータに昇格しても、一人に任せきりにされるわけではなく、ベテランの補佐が付いて指導し、しっかり育てていただきました。
どれくらいでオペレータになれるかは人それぞれで、５年から、長い人は10年かかることもあり、１年は早い方だと言われています。

ー仕事の面白さや魅力とは。 現場仕事は好きなほうで、現場に出るとそれだけで気持ちがいいです。現場では、相手は自然です。そのつど環境も条件も違い、型にはまることがなく、マニュアルもありません。その分、想像力を膨らませ、自分で考えて仕事できる楽しさがあります。
安全を第一に、場所や地形に応じていろいろ考え、これが駄目ならこうしてみようと試行錯誤しながら足場を組んだり、ステージ作りをします。先をイメージしながら仕事を進めていき、仕事の基地を作るわけです。それがイメージ通りにうまくいった時は楽しいですよ。子どものころにたくさんの遊びを経験している人は、創造力や発想が豊かで、この仕事に向いているように思います。
また、地質調査は、早ければ２、３日で終わります。山の中で１か月ということもありますが、半年も１年も同じ仕事が続くことはありません。次々に現場が変わるため新鮮で、マンネリになったり、飽きることがないのも魅力です。

ー資格について教えてください。 地質調査技士と１級さく井技能士の資格を持っています。地質調査技士は地質調査業務に従事する技術者の資格で、2017年に取得しました。当社の場合、仕事の割合として公共事業が多く、地質調査が基本になるため、地質調査技士の資格は取った方が良いと思います。さく井技能士は井戸を掘る資格で、国家資格の一つであり、2022年に１級を取得しました。

ーやりがいを感じるのはどのような時ですか。 新しいサッカースタジアム、安芸バイパス、広島平和記念公園、砂防堰堤など、いろんなところで我々は地質調査をしています。地質調査は、社会に必要とされる仕事です。ここはお父さんがやったよと家族に対して自慢できる仕事です。地上では見えない部分の状態を知るために行う仕事ですが、それだけにいかに誠実に、偽りなく行うかが問われる仕事であり、そこに誇りを持っています。
井戸掘りの仕事で印象に残っているのは2018年の広島豪雨土砂災害です。呉市天応地区は大きな被害を受け、断水が続いた中で、あるお宅の井戸が地域の人々のために非常にお役に立ったと感謝されました。

ー仕事に興味を持った方へのメッセージなどがあればお願いします。 この仕事は、資格を取るまでに時間もかかり、若い人も減っており、さらに高齢化が進んで、オペレータが減っています。そんな中でも地質調査の仕事量は変わりなくあります。建設工事がある限り、仕事がなくなることはありません。もちろん公共工事が少ない時もありますが、当社の強みはそんな時も民間の井戸掘りの仕事があることです。
もう一つ、IT化が進む時代にあっても、経験やセンスが問われるこの仕事は、AIに取って代わられることはありません。AIに負けない仕事。これも大きな魅力だと思います。

会社概要

（2024年2月現在）
情報提供：広島商工会議所 産業・地域振興部 産業振興課