働き方改革プロジェクトチームを結成し、
労使一体となって取組を推進
復建調査設計株式会社
取り組んだ背景は?
~女性従業員が働き続けられる環境を目指して
土木・建設に関連する測量・地質調査から各種設計・施工管理まで一貫対応している総合建設コンサルタントである同社。
「長い間、残業は当たり前という慣習が社内に根付いていました。しかし会社の成長のためには、業務を効率化して生産性を高め、働きやすい環境づくりを進めていかなければと感じていました」と取締役常務執行役員経営管理本部長の來山尚義氏。
さらに「ここ数年、女性技術者が増えてきました。彼女たちが結婚・出産・育児などのライフイベント迎えた時、退社されてはせっかくの人材を手放すことになります。また介護や治療など、従業員のさまざまな事情がある中で、環境整備は喫緊の課題でした」と、執行役員経営管理本部副本部長の高橋祐司氏も続ける。そこで、2017~19年度の中期経営計画に、「人材の育成・定着のための就労形態、労働条件の検討、労務環境の改善等を進める」「生産性向上を目指す働き方改革を進める」という2つの施策を盛り込み、プロジェクトを始動した。
取組導入のプロセス
~「働き方改革プロジェクトチーム」を結成
取組スタートに当たり、17年11月に中期経営計画策定委員による「働き方改革PT(プロジェクトチーム)」を結成した。さらにその傘下に、「生産性向上WG(ワーキンググループ)」と「多様な働き方検討WG(ワーキンググループ)」を設置。「多様な働き方検討WG」のメンバーには、次世代を育てる意味も込めて若手従業員を多く選出した。これら2グループが中心となって、従業員から仕事上の要望・意見などを吸い上げ、月1回の会議で情報を交換。優先順位を付けて提言のピックアップを行い、「働き方改革PT」に上げて、取締役会で本格的に採用に向けて検討するという流れを構築した。
主な取組と工夫点
~2つのワーキンググループが主体となり新制度の提案や運用
◆1時間仕事に集中するMyタイム制度の試行
「生産性向上WG」の提言から実現したのが、18年10月より本社事業部で試行している「Myタイム制度」。これは、毎日11~12時は自分の時間を確保し、計画性を持って仕事に集中するという新制度で、その間は緊急時を除き外部からの電話に応じず、メール発信もしないという徹底したルールを設けている。従業員に浸透して効果が見られれば、全社への展開を検討している。
◆「全文検索システム」を導入し業務を効率化
同じく「生産性向上WG」の提言により、社内資料の「全文検索システム」を導入した。従業員が過去に作成したリポートの中には、新規リポート作成にも役立つものが多いが、それを探すことに時間がかかっていた。システム導入により、過去データを検索し、容易に引き出せる仕組みを整えた。必要な情報を必要な時に速やかに、広く共有することで、業務効率の向上を期待している。
◆「場活」をはじめとした研修の充実
「建設コンサルタント業では人材が最大の財産」という原点に立ち戻り、「国内留学制度」や「英語研修」などの人材育成に力を入れている。3年前からは外部講師による「場活(組織活性化研修)」を実施。スタート時は部長クラスであった研修対象を18年は中堅の従業員に広げ、従業員の組織に対する意識改革を促進。「普段は顔を合わせることがない他部署の従業員と話すチャンスにもなり、良い刺激になりました」などの声が上がっている。
◆1時間から取得可能な有給休暇
「多様な働き方検討WG」のメンバーである空間情報部情報補償課の森浜さんは、女性従業員の声の吸い上げに力を入れ、「時短勤務のバリエーションを増やしてほしい」という意見に着目。ワーキンググループ内のテーマに上げ議論を重ねた結果、1時間から休みが取れる「時間単位の有給休暇取得制度」が、19年4月より導入されることが決まった。
「結婚や出産等さまざまなライフイベントを経ながら、長く働いてほしいと願っています。新制度がその後押しになればうれしいです」と話す。
◆イントラネットを活用した有給休暇の取得促進
中期経営計画の中に「月1日の有給休暇取得」を盛り込み、各部署で浸透を図っている同社。休暇希望日をイントラネットにアップし、周りの従業員と共有・調整することで、金曜日や月曜日を絡めて3連休を取得する従業員も増加してきたという。また同様に、イントラネットを活用した「社内規程」の簡易版の公開を準備中。担当した経営管理本部総務人事課の西岡課長は、
「社内の育児や介護に関する制度自体はもともと整っている会社です。今後はその内容を時代に沿うものに変え、分かりやすくまとめて周知を図っていきたいです」と話す。
取組の中では課題も
取組を進める中では、「なぜ自分たちがここまでしないといけないのか」「これまで通りの働き方で良いのでは」といった困惑や不満の声も上がったという。
「会社として取り組む必要性を丁寧に説明していくことが重要です」と來山氏。
「働き方改革PT」メンバーが、従業員一人一人に取組の目的や全社的に推進していくことの意義を説明している。
取組の成果
取組前と比べると有給休暇の取得率が向上し、ノー残業デーも定着した。職場環境の改善(社内デスク・椅子・備品などのリニューアル、全社のOAフロア化、トイレの全面改修、女子トイレの増設など)も併せて進めており、「仕事がしやすくなった」「職場の雰囲気が良くなった」というプラスの声が多数働き方改革PTに届いている。有給休暇希望日の計画申請は、全従業員をターゲットにし、以前はほとんど有休を取っていなかった管理職にも「休める時に休もう」という意識変化が見られるようになった。
◆労働時間・休暇(直近1年間)
・常用雇用者の総実労働時間(1カ月平均)が171.0時間
・常用雇用者の年次有給休暇の平均取得率が54.5%、平均取得日数は9.3日
◆多様な働き方(直近3年間)
・育児・介護を除く、フレックスタイム制度の利用が24人
◆育児(直近3年間)
・在籍中に出産した女性従業員のうち、育児休業を取得した者の割合が100%
◆非正規雇用(直近3年間)
・非正規社員から正社員へ転換する社内制度を7人が利用している
◆若年者(直近3年間)
・正社員として就職した新卒者等のうち、同期間に離職した者の割合が0%
従業員からの評価
「多様な働き方検討WG」の森浜さんは、取組を進める中で「女性従業員の率直な思いを聞けたこと」そして「その思いを届ける体制が社内にできていること」に手応えを感じている。例えば、結婚した女性従業員に社内メールでアプローチした際、「出産後に仕事のパフォーマンスが低下するかもしれない」「育休中に会社とのつながりが希薄になってしまうかも」などの不安を抱えていることが分かった。「本音を話せる人ができてうれしい」という従業員もおり、彼女たちの声の吸い上げに今後も力を入れていきたいという。
「時短勤務を望む人、育児中はフレックスで働きたい人など、さまざまな価値観があると思います。従業員が個々にベストな働き方を認識し、それらを受け入れる柔軟な体制を会社が整えていくことが、結果的に生産性アップを導くのではないかと思います」と森浜さん。
今後の目標など
中期経営計画上では、20年に現行の「働き方改革プロジェクト」は一区切りを迎えるが、
「3年で完結する取組とは思っていません。形は変わっても、メンバーを入れ替えつつ活動を継続していきたいです」と來山氏は話す。
若手従業員をグループに加えることで、次世代を担う従業員を育成できるメリットも感じている。さらに森浜さんらが、女性従業員のロールモデルとして成長していくことにも期待を寄せている。同社の目標は入社した従業員がずっと働きたいと思える会社、仕事もプライベートも両立できる会社になること。今後も時代に合った仕組みを探りながら、一歩一歩、確実に前に進んでいきたいという。
取材日 2019年2月
会社概要
復建調査設計株式会社
所在地:広島市東区光町2-10-11
URL:http://www.fukken.co.jp/
事業内容:土木、まちづくりに関する調査、計画、設計など
従業員数:626名(男性540名、女性86名)
(2018年4月現在)
情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com)