《サッカースタジアム建設始動》プロジェクトのキーマン3者に聞く①
広島経済レポート
24年2月開業、回遊性高めにぎわい創出
サンフレッチェ広島の新たな本拠地となるサッカースタジアムが2月1日、中区の中央公園広場で着工した。市はスタジアムの設計・施工事業者に大成建設など8社(フジタ、広成建設、東畑建築事務所、環境デザイン研究所、復建調査設計、あい設計、シーケィ・テック)で構成するJV(共同企業体)を選定。市、サンフレッチェ広島、大成建設の3者にコンセプトやプロジェクトにかける思いを聞いた。
光と映像と音の統合演出 訪れた全ての人が楽しめる空間へ
-2月に建設が始まりました。 サンフレッチェ広島の新たなホームスタジアム建設がいよいよ動き出しました。選手・チームへの最善の試合環境はもちろん、観客の皆さまに一流の観戦環境を提供し、国際試合に対応する世界水準の機能を備えた施設を目指しています。
-具体的には。観客席の最前列からピッチのサイドラインまでの距離が8㍍と近く、監督からの指示や選手の息づかいなど、より臨場感を味わえるようになります。一般席に前後左右にゆとりを持たせ、ゆったりと試合を楽しめるほか、高品質なサービスを提供するVIPラウンジ、スカイボックスなどのホスピタリティーエリアも設けます。さらに感覚過敏を抱える人に配慮した「センサリールーム」を常設し、訪れた全ての人がストレスなく思いっきり楽しめる空間を目指します。
-参考にしたスタジアムは。これまでの多くのサッカースタジアムが欧州を手本にしてきました。当社もコロナ前にさまざまな国を視察しましたが、その中で一番感銘を受けたのが米メジャーリーグサッカー。欧州と比べて女性や家族連れが多いのが特徴で、じっと座っているのでなくスタジアム内を歩き回って食事や全体の雰囲気を感じるなど、思い思いの観戦スタイルを楽しんでいます。また、日本にないバラエティーに富んだコンテンツも多い。例えば、選手が控え室からグラウンドに出る動線でファンが選手を近くで見られるトンネルラウンジも米国が発祥です。
さまざまな仕掛けを取り入れ、家族やカップル、もちろん1人で訪れた人にも満足してもらえる環境づくりに全力を注ぎます。そのほか、欧米のスタジアムで導入が進む最新の映像・音響技術を取り入れた「光と映像と音の統合演出」など、試合以外にもエキサイティングな体験ができる多様なコンテンツを計画しています。「ファン・サポーターに楽しんでもらうだけでなく、初めて訪れた人にファンになってもらう空間」に育てます。
-スタジアムの東側に芝生広場を設けます。
NTT都市開発など10社の企業グループが整備を進めます。ランニングやフットサルが楽しめる「スポーツ&ウェルネス」、広島の文化などを発信する「広島カルチャー」など、広場を五つのゾーンに分けてにぎわいを創出する計画です。
スタジアムは設計施工を一元化するデザインビルド、公園の広場は官民連携で整備するパークPFIという異なる方式です。スタジアムを家に例えるならば、広場は庭。それぞれが異なるコンセプトだとチグハグになってしまいます。県内外から多くの人が訪れる大阪の天王寺公園「てんしば」や富山の富岩運河環水公園などの成功例を見習い、統一感のある空間づくりを目指します。
おかげさまでエディオンから30億円、マツダから20億円、3月末時点で広島商工会議所を窓口に経済界から17億円、個人3・5億円と、目標額を大きく上回る寄付が集まりました。また3月22日には広島商工会議所と中区の紙屋町地下街シャレオで「たる募金」を行いました。県民や経済界の期待の大きさを感じ、身が引き締まる思いです。
-目標を教えてください。当社会長の久保允誉が「中央公園広場が年中にぎわう場となり、平和公園からスタジアムや広島城に向けての人の流れができることで、広島が一層魅力ある街になってほしい」と常々言っています。2019年からは中心市街地の企業や店舗と連携し、サンフレコインの実証実験を行いました。中心部の相互送客ネットワークを組み、エリア内の回遊性を高める取り組みを構想しています。さまざまな施設や多目的な機能を融合させる新しいにぎわい拠点を目指します。市や県などと連携しながら、多くの人に感動を与えられるランドマークとなれるよう、まい進します。
サンフレッチェ広島 総合戦略室長兼スタジアムパーク準備室長
信江 雅美 氏
1961年4月16日生まれ。立命館大学を卒業し、88年にダイイチ(現エディオン)入社。経営企画部長、営業戦略部長などを経て、2015年11月からサンフレッチェ広島でサッカースタジアム建設推進の責任者を担う。
「広島経済レポート」2022年4月28日号掲載記事