組織力高め難局乗り切る 原子力の早期稼働目指す
~中国電力 瀧本 夏彦社長~
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—6月28日付で社長に就きました。
2021年度決算は年度収支が過去最悪で、7月末に発表した22年度の第1四半期も過去最大の赤字だった。世界的な資源高騰が直撃しており、その中で何とか赤字を縮小させる努力を続けている。今期業績はまだ見通せていない。大変な状況だが頑張ろうと前向きに捉えている。
私が入社したのは、2度のオイルショックを経た1981年。燃料価格が高騰し、入社の前年に電気料金の大幅な値上げを行っている。石油頼りだった日本が国を挙げて取り組んだエネルギー転換の時代だ。そして現在はカーボンニュートラル(CN)という課題に迫られている。40年前は既に先輩らが道筋を付けてくれていた。今回は自ら先頭に立ち、難局を乗り切りたい。
第2号機は定期点検中の状況が続いている。出力82万㌔㍗という大きな発電所だ。昨年9月に原子力規制委員会から原子炉設置変更の許可を得たが、ここまでに約8年を要した。並行して地元の了解を得るための説明会などを開き、今年6月に立地県である島根県知事から再稼働について同意していただいた。まだ国の審査は続いている。また島根3号機は137万3000㌔㍗と2号機の1.5倍超の大きさで、二つ合わせると200万㌔㍗を超え、当社に とって大きな存在となる。それぞれの審査に誠実に対応し、早期稼働できるように努力しているところだ。
―CNの流れをどう見ていますか。
さまざまな関係者と連携し、幅広い視野で技術開発を進める必要がある。ゴールとなる2050年に向けて着実に進めたい。ただしCNはお金が相応にかかることを世の中の共通認識として持つ必要がある。CN対応の電力を造ると割高になる。一方で経済性も考慮しないといけない。性急な変化ではなくステップを踏みつつ進むのが正しいやり方だろう。
瀬戸内工業地域は重化学工業で栄え、地域の経済基盤を支えるのは大きな工場だ。その多くが石炭などを燃料源・熱源にして現在のコスト競争力を保っている。皆さまの期待に応えるためにも、発電時にCO₂ を出さない原子力発電が重要となる。加えてさまざまな再生可能エネルギーを開発し、お客さまを支援するラインナップに磨きを掛けていく。
コロナの影響もあり、施工に用いるSEP船の争奪戦になっており、当初の22年中の営業運転開始は遅れている。日本の再生可能エネルギーは最終的には洋上風力がメインになると考えている。その知見を収集したい。並行して国内で適地を探している。2030年度を見据えた経営ビジョンに再生可能エネルギーの新規導入量を30〜70万㌔㍗にすると盛り込んだ。この多くを洋上風力が占めるのではと期待している。
―信条を教えてください。 就任あいさつで毛利元就公の「百万一心」を引用した。仕事は組織で行うものであり、一人一人が共通のゴールを見据えて助け合えば1+1は2よりも大きくなる。そういう組織力を引き出す触媒のような存在になれれば。
瀧本 夏彦(たきもと なつひこ)
中国電力社長。1957年6月6日生まれ、山口市出身。
東京大学を卒業し、81年に入社。販売事業本部・周南営業所長、常務執行役員・経営企画部門長、同販売事業本部長などを経て、2020年6 月から代表取締役副社長を務めた。
広島経済レポート2022年8月25日号掲載