組織内初のロールモデルを育成し、
週2回のノー残業デーなど、時代に即した改革の推進

広島空港ビルディング株式会社

1 寿退社が当たり前の時代に別れを告げ、
「女性の定着」を意識した取組を開始

 広島空港ビルディング(株)は、広島空港関連の業務を担当する広島県の第三セクター。「空港」という名前に惹かれて応募する女性が多いことや、免税売店・直営店の販売業務がある影響もあって、昔から女性比率が高く、平成29年9月時点で同産業の女性従業員比率全国平均が38%(※1)であるのに対し、同社の同比率は60%である。女性の配置に関しては、販売に従事する者が最も多い。それ以外の職種では男女偏りなく配置されている。(図1)店舗での接客業務以外は基本的に事務仕事が多いため、男女関係なく仕事が割り振られる。また、空港自体は23時まで開館しているものの夜間の警備や建物管理等は外部の警備会社等に委託し、閉館より前に帰宅することが可能だ。

 一見すると、男女問わず働きやすい環境のように思えるが、10年程前までは結婚・出産で退職する女性がほとんどだったそう。それは「女性は寿退社が当たり前」という意識やマタニティーウェアを着用した接客業務が禁止され、女性は管理職にならないといった社風が原因であったという。しかし、社会情勢の変化に合わせて継続就業する女性が徐々に多くなったことや、「人材確保が難しい」という課題に直面する中で、社内において「人材の定着」「人材の能力発揮」を目的とした取組が進められるようになった。そんな状況下で同社が特に力を入れて取り組んできたのは、①育児経験のある女性従業員を「女性管理職ロールモデル」として育成すること、②男女問わず働きやすい職場環境づくりを進めることの2点である。

※1 出典:総務省統計局(平成29年9月)『労働力調査 基本集計 産業、職業別就業者数』

図1 男女の職種別の配置状況 

2 「女性管理職ロールモデル」の育成と新たな人事評価の導入

 以前は「前例もないし、女性が管理職になるのは…」という雰囲気があり、女性管理職は1人もいなかった。それを一新したのが現在の山本社長。他社で人事や営業等のキャリアを積んだ山本社長は、平成27年に「女性比率が高いのであれば、女性管理職比率も高めていかなければ」という方針を打ち出した。それを実現するための新マネジメント体制を敷き、公に発表するためのプレスリリースも行った。「家庭を持っていても管理職になれる」「後進にも続いてほしい」という意図から、子育てをしながら同社でキャリアを積んだ女性、宮川さんを個客サービス部の課長に任命。新たなロールモデルの誕生とトップダウンによる体制刷新に、社内の意識も少しずつ変わってきたという。宮川さんは
「最初、役員から課長になってほしいと言われたときは、正直驚きを隠せませんでした。前例もありませんでしたし、そもそも将来管理職になるという意識がまったくありませんでしたから。でも、『宮川が道を作らないと次が続かない』と説得され、私もその重要性を理解した結果、今があります。課長になって大変なことも多々ありますが、信頼できる直属の上司がサポートしてくれるおかげで働きやすく非常にありがたいと思っています。今はまだ管理職を目指したいという女性は社内に少ないですが、やる気になれば管理職になれるという環境ができてきたので後進にも管理職を目指してほしいです」
と語る。こうしたロールモデルの誕生は、女性従業員の意識改革に加え、男性従業員を含めた全社の人材活性化に役立つと山本社長は考えているという。

 新たなマネジメント体制を作る前段階として、平成25年に、男女、年功序列に関係なく本人のやる気・スキルを評価し、昇給昇格を決めるという新たな人事評価制度を導入した。自己評価シートをもとに自己評価、部内評価を行い、その結果を本人にフィードバックすることで「自身はどこが足りず、どこを評価されているか」を確認することができる。新たな人事評価制度を導入して4年が経ち、平成23年度には3名だった女性主任が、平成29年度には8名と昇進する女性が増加している。新たな体制と人事評価の両輪で、さらに女性管理職を増やしていきたいと考えている。

3 週2回のノー残業デーと夏季休暇取得率アップへの取組

 「男女問わず働きやすい職場環境作り」の取組の一環として、同社では週に2回「ノー残業デー」(水曜日と金曜日)を実施し、従業員の意識改革を図っている。残業を100%ゼロにすることはできていないものの、意識する人が多くなった結果、全体的には残業せずに帰る従業員の割合が多くなったという。

 また、年次有給休暇の取得促進も行っている。第3セクターである同社には公的機関と同じ7~9月の間に取得できる夏季休暇5日(有給休暇とは別)が付与されている。しかし、販売部門に関しては、その期間が繁忙期と重なるため取得率が低迷していた。そこで販売部門については、特別に10~12月の夏季休暇取得も可能とした。その結果、夏季休暇の取得率は100%となっている。

 さらに、世間が今ほど「働き方改革」を意識していなかった3年前、他社に先駆けて「ワークライフバランス」の研修を社内で実施した。きっかけは、丸山企画総務部長が、一般社団法人全国空港ビル協会(※2)主催の同研修を受けた際に非常に感銘を受けたことであり、その研修講師に同社に来てもらえるよう熱烈にアタックをしたことから実現したのだという。丸山氏は、日頃から女性従業員の家庭環境を把握したり、産休や育休で休んでいる従業員とこまめにコミュニケーションを取る等、女性従業員の状況を理解することに心を砕いてきた。経営トップだけでなく、部長クラスも「働き方改革」「ワークライフバランス」を意識していることが同社の取組を加速させていると言えるだろう。

※2 空港ターミナルビルの施設及び管理の改善並びに空港利用者に対する案内及び誘導に関する調査研究を行うとともに、これらの諸施策の推進を図り、併せて会員の相互連帯を強化することにより、空港ターミナル事業の振興と民間航空の発展に寄与することを目的として設立された協会((一社)全国空港ビル協会HPより)

4 「人材確保」という課題に向けて

 以上のような改革を進めた結果、女性の定着率は確実に伸びた。平成23年には、正社員の平均勤続年数は男性12年、女性9年だったところ、平成28年には男性13年、女性12年となった。
 今後さらに改革を進め、男女問わず休みが取りやすい職場環境を作る上で欠かせないのが人材の確保だ。家庭環境に配慮してシフトを組んだり、ジョブローテーションを進め属人化をなくすために、部署内外でカバーし合えるだけの人材の確保が必要だ。しかし、同社では計画通りの人数が採用できていないという悩みがある。数年前は新卒応募者が60名ほどいたが、近年は激減しているという。原因としては、全国的に新卒採用を増加させる動きがある中で、相対的に同社を応募する人が減少していることや、「販売部門のシフトは朝早いことから子どもの送り迎えができず、子育てとの両立が難しい」「立地の面で市内と比べると不利である」等が考えられると同社は分析する。今後、シンガポール便の増便など航空需要の高まりに備えて、同社の業務も増す予定。「男女問わず働きやすい環境作り」を進め、優秀な人材確保に努めていくことが直近の課題だと言い、新たな課題の解決に向けて動き出している。

取財担当者からの一言

 広島空港ビルディング(株)は、女性比率が高く、男女の固定的役割分担等もなく、平等に能力を発揮できる仕事ばかりであったにも関わらず、女性の活躍が十分ではなかった。それを改善するため、初の女性管理職を登用するなど、風土づくりを進めている最中である。最初は女性従業員自身も、周りにも抵抗があったものの、次第に意識が確実に変わってきている様子が取材を通じてうかがえた。宮川氏の「以前は女性が管理職になるという概念がなかった」「(今は)後進にも管理職を目指してほしい」という発言からもそれがわかる。人材確保という課題を抱える一方、女性の定着率が伸びる中で、どれだけ自社の女性従業員の個々の事情を考慮しながら活躍させることができるか、上位職へ登用していくかという点に今後も注目していきたい。

  ●取材日 2017年9月
  ●取材ご対応者
   企画総務部長 丸山 正之氏
   企画総務部課長 新本 和司氏

会社概要

広島空港ビルディング株式会社
所在地:三原市本郷町善入寺64-31
URL:http://hiroshima-airport.com/
業務内容:同社は広島県の第三セクターとして、広島空港関連事業を担う会社。広島空港内に事務所を構える。事業内容としては主に4つ:①広島空港ターミナルビル、倉庫施設設備等の賃貸業 ②売店における物品販売(特に免税店) ③旅客や送迎客に対するサービスの提供 ④広告宣伝業。子会社に、株式会社広島エアポートホテルを有する。
従業員数:35名
女性従業員比率:60.0%
女性管理職比率:14.3%
(2017年9月現在)

情報提供:広島県
(働き方改革・女性活躍発見サイト「Hint!ひろしま」http://hint-hiroshima.com